んな気分

「ナマエ。」

…あ、機嫌悪い。
部活で何か気に入らないことがあったんだ。

正門で待ち合わせ。雅治の部活が終わるのを待っていたら、まさにその人に呼ばれて、振り向いてみれば。
あからさまに不機嫌そうな彼。

どうしたものかと少し考えていたら。
「何しとる、早う帰るぜよ。」
ムスっとした表情で、鞄を肩に担ぎながら言われた。

無造作に私の手を取って歩き出す。

ああほんとに機嫌悪い。いつもより相当歩くの速い(ちょっと大変)。
こういう時、雅治はあんまり人のことを考えない。

軽く急ぎ足で雅治に手を引かれながらなんとか聞きだしたところによると、部活で真田くんに長々とお説教されたらしい(それはあんまり気にしてないみたい)。おまけに今日はプレーの調子が壊滅的に悪かったらしい。

そんな調子で頑張って歩いていたら、いつの間にか私の家。
…を、平気で通り過ぎていく。手は取られたまま。

「雅治!家!過ぎちゃうよ、」
「ウチに来んしゃい。」

流し目。
ああ、私に選択権はない。
私の手を握る雅治の手の力が、少し強くなった。

雅治の部屋に入ると、雅治は何ともけだるそうに鞄を放って、そして、何の前触れもなく私をぎゅっと抱き寄せた。

「え、ちょ、雅治!」
「文句言わんと、抱かれときんしゃい。」
「どうしたの、急に、」
「……抱きたい。」
「抱っ…!」

雅治は平気でそういうことを言う。誤解を招きそうな口調とか雰囲気で。多分本人もわかってやってるんじゃないかな。
そりゃあいわゆる、そういう意味の時もあるけど、今日は…うん、文字どおりの意味だ。そういうスイッチが入ってる。

「もう…」
軽く髪に触れて、撫でるように手を動かすと、雅治は気持ちよさそうに目を細める。
「…ナマエー、」
抱えられる様にして、ベッドにもたれて座る。
何をするでもなく、ただひたすら抱きつかれる。
たまに、こういう時がある。猫みたいに、ひたすらくっついてくる時が。

銀色の髪が首や頬に当たってくすぐったい。
くすくす笑って身をよじれば、それによってできた隙間さえも気に入らないというように、もっときつく抱きしめられる。
ほっぺたをくっつけて、唇を寄せて。
さっきの機嫌の悪さはどこへ行ったのかと言いたいほど、強く、優しく触れてくる。

「…だめ。」
携帯が光ってるのを見て、立ち上がろうとした私はあえなく雅治の腕の中に逆戻り。

ぎゅうぎゅう抱きしめられる身体は、少し苦しいけれど暖かくて。幸せで。
ほとんど言葉を発しない雅治は、だけど時々かすれたような息を吐いたりして。私を抱きしめるのに夢中みたいで。

そんな雅治がかわいくて(本人は言わない)、大好きで、それに私にしか見せない姿だと思うとすごく愛しくて。

私も負けじと雅治を抱きしめた。


End.


妄想をそのまま書き起こすのって難しいですね。今さらですが。
だからこそ思い通りに書けた時が嬉しいんでしょうね。
少しでもいろいろ伝わるような文章を書きたい…


2011.3.22

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