アリア・プレガンド
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彼女が前回ここに立った時、ライン川は朝一番の光に照らされてさざめき、輝き、流れていた。まるで彼女のそれまでを押し流し、この町から運び出してくれるかのように、彼女には感じられたのだ。
彼女があの時のことを忘れたことはない。あれから20年近くたった今でも。
たくさんのことがあった。自分の存在すら分からなくなる程辛いことも、何物にも代え難い幸福も。それらを経て、彼女は今再びここに立っている。
あの時と同じように、今日もライン川は流れている。再統一を経てますます観光地として有名になったこともあって、行きかう船は増えたが。ローレライが傍らにいるのも、あの時と同じである。
ただ、決定的に違うことが1つあった――今、彼女の右手は最愛の娘の手を握っている。
20131015
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