For one week | ナノ


 
 自然と身体が強張った。
 あの夜の痛みも頭の奥まで支配する快感も、まだ鮮明に覚えてる。

「これ買ってきた」

 そう言って樹が見せてきたのは、母さんが使ってる化粧品容器みたいな物。それが何なのかわからなくて見入ってたら、ローションだよと補足される。
 一体どこで買って来たのかは知らないけど、意外と普通に売ってるもんだね、と樹は笑った。

「あやに前みたいな痛い思いさせたくないしね」
「っ、」

 まただ。
 樹の言葉に、行動に、戸惑う事がある。
 俺の気持ち何てお構いなしの身勝手さなくせに、俺の身体を労るように気遣う事がある。
 いっそ、ただ酷くしてくれれば良いのに。まるで性欲処理の道具のように扱われたら、素直に憎む事も出来るのかもしれないのに。
 十分酷い事をされてる自覚はあるけど、樹の事を憎み、嫌う事の出来ない自分がいた。

 優しくされると心が揺れる。
 樹の気持ちを拒絶出来なくて、受け止め方もわからなくて、俺は困惑していた。

「──ッあ、」

 俺の思考を遮るように秘部に何かが触れて這い回る。
 樹の指だ。
 触れた指はヌルヌルしてて、動く度にぐちゅ、と粘着質な音が鳴らした下部から聞こえた。多分さっきのローションを塗っているのだろう。
 手の動きとローションの滑る感触が凄く気持ち悪くて、思わず腰が引けそうになる。
 その衝動と嫌悪感を必死で堪えている俺に、あのね、と穏やかな声で樹は話し掛けてきた。

「ずっと、あやの事考えてた」
「ぅ゛、……っあ」

 秘部の周りを這い回るだけだった指が、静かに中に侵入してくる。ローションのお陰か前みたいな痛みは無かったけど、異物感に自然と指を締付けてしまう。

「力抜いて」

 笑いを含んだ声に首を振る。不快感は拭えない。
 その締付けはさして障害でも無いのだろう。樹は特に気にする様子も無く、中に入れた指を動かしながら言葉を繋いだ。

「ずっと、ずっとあやを抱きたかった。どんな声で鳴くんだろう? とか、どんな反応するんだろう? とか、想像ばかり膨らんでね」
「……ん゛、……ぅ……っひぁ!」

 樹の指がある箇所に触れた瞬間、嫌悪感の中に別の感覚が生まれて、身体が跳ね上がった。
 
「ここか」
「ぅあ! あぁっ……あ!」

 樹は小さく呟くと、そこばかりを執拗に攻めてくる。断続する強い刺激に、俺はかぶりを振った。

「欲求ばかりが溜まって、本当どうにかなりそうだったよ」
「ぁあ゛、ぃっ……やだ、……ああ!」
「一度抱けば、少しは静まるかと思ったんだけど……」
「あっ、ぁあ! ──んぅっ」

「違ったみたいだ」

 静かな呟きと共に、呆気ない程するりと樹の指が引き抜かれた。
 奥に微かな疼きがある。けれど苦しいほどの快感が止んだことに安堵して、俺は荒くなった呼吸を落ち着かせる事を優先した。

 疑問を抱く余裕なんてなかったんだ。

「あやの身体を知ったら、欲求が増した。もっと、もっと俺だけの物にしたくなった」
「……ぇ……」

 ヌルリとした何かが、後孔に押し当てられた。見なくても見当のつくソレに、俺は息を飲む。反射的に腰を引こうとしたけれど、それより先に樹に押えられた。

「ぃ……つき……」

 目前に迫った恐怖に身体が戦慄く。歯の根が合わずカチカチと音を鳴らしながら、俺はこどもが駄々を捏ねるようにイヤイヤと首を振った。

「力抜いて、」

 だけど樹は絶望的な意味を含む言葉で微笑む。

「や……ゃ、め……」
「大好きだよ、あや」

「っ───!!!」

 閉ざすそこをぎちぎと無理矢理押し広げて、樹のモノが捩じり入って来る。大きな圧迫感に、涙と汗が噴き出すように出た。
 初めての時みたいな激痛はない。けれど、強過ぎる圧迫感が痛みのようだった。

「ぅ゛、……や、あぁっ……」

 締付ける拒絶をローションの力を借りて、少しずつ、着実に奥へ奥へと樹のモノが押し入ってくる。押し広げられる感覚と増える質量に俺は顔を顰めた。

「ん、……やっぱ、きつ……」
「っあ゛、……あ、ぁ゛」

 後どれだけ入ってくるのだろう。奥へ奥へと増えていく圧迫感に妙な不安が芽生え始めた頃、樹の動きが止まって、小さく息を吐くのが聞えた。

「全部、入ったよ」

 言われて実感する。ピタリと隙間なく感じる樹の肌を。

「やっぱり、あやの中は……イイ」
「っ、……ん……く」
「あったかくて、きゅうきゅうと締め付けて、俺に絡み付いてくる」
「ッ、」

 羞恥心を煽る様な露骨な言葉に、耳を塞ぎたくなった。
 けれど、そんな余裕は無くて。

「動くよ」
「っ! や、……まっ──あ゛あぁ!!」

 待ってくれと続けようとした呼び掛けは、勢い良く先端付近まで引き抜かれ一気に根本迄入れられた衝撃にかき消された。


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