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逃げようともがいても、体格も力も差があり過ぎて全て樹の腕に吸収されて終ってしまう。
「やめっ、……いやだ! っ放せ、放せよ!」
「俺と付き合う?」
「いやだ! 絶対に嫌だ!」
「……なら放さない」
言葉と共にカチャリと無機質な音が聞こえた。音のした下に目を向ければ、樹が俺のズボンのベルトを外し始めている所だった。
「やだっ……樹、お願……だから、も……やめてくれ!」
暴れて叫んでも、樹の手は止まらない。俺は必死に訴えかける。
「俺が悪いならっ、謝るから……! 頼む、……頼むから、も…やめてくれよ!」
「………謝る?」
樹の動きがピタリと止まった。…俺の言葉に耳を傾けてくれてる…?
今がチャンスだと思った。
俺は嗚咽混じりに、一気に巻くし立て言った。
「俺の事っ、……嫌いなんだろ。気に、入らない……んだろ? 何か気に障る事、したなら、……謝るよ。俺の存在自体気に…入らないならっ、出来るだけお前の視界に入らないように、心掛けるから……!」
だから止めてくれ。と消え入りそうな声に切望を込めた。
「……やっぱり体にわからせる必要があるみたいだね」
低く冷やかな声と共にベルトが引き抜かれ、折り曲げた状態の俺の手と腕を一纏めに拘束した。
「っな……樹! ぃやだ、取れよ! いつ──ひぁっ!!」
俺がベルトに気を取られてる内にズボンのホックを外し、滑るような動作で樹の手が下着の中に侵入してきた。樹の筋張った大きな手は迷うことなく俺自身を包み込み、ゆっくり上下に擦り出す。
「っ! ……、やめっ……!」
最初は探るように緩やかに。次第に速さを増して、刺激を強くした。
どんなに嫌だと抗っても体は正直で、与えられる刺激により沸き上がる快感は抑えられない。俺の意思を余所に、体は樹の手の動きに素直に反応してしまう。
「濡れてきた。感じてるんだ?」
俺自身からは先走りが溢れ、樹が扱く度に制服のズボンの中からくぐもった水音を響かせた。
「はっ……やめっ、やだ、……ぃゃだっ」
巧妙な樹の手淫にどんどん高められ、自然と呼吸が荒くなる。呼吸だけじゃない。身体が熱くなって、痙攣するような感覚がどんどん強くなってくる。
「い、……いつきっ、だめ……ダメ! も、放せ……!」
「そろそろ限界? いいよ、出して。受けとめてあげる」
「ッヒ……んぅ!」
耳元で囁かれた直後尿道口を親指で抉られ、臨界点ギリギリだった俺はその刺激に堪らず達してしまった。
「濃いね。もしかして一人であまりしてない?」
「はっ……はぁ、はあ」
俺は肩で呼吸をしながら、弟にイかされたショックに打ちひしがれていた。樹の質問は耳に届くけど頭に入らない。
「まあ、いいや」
ぽつりと樹の呟きが聞こえた直後、俺の体は壁に押し付けられた。
「気持ち悪いだろ? 脱ごうねズボン」
「へ……あっ、やめ!」
制止も虚しく下着ごとズボンが下ろされ、俺の下半身が外気に晒される。
「上が邪魔だけど、まぁいいか」
「──っひ!」
樹はポツリと呟くと、露になった俺の尻の孔に先程出した精液をグリグリと塗り付けてきた。その塗り付けられる感触が凄く気持ち悪くて、ゾクゾクと鳥肌がたった。
「やめっ……ろ、樹っ! 放せ……っ、放せよ」
「暴れないで。ちゃんと慣らさないと痛いのはあやなんだよ」
「っ…」
痛いって、……痛いって。
……やっぱりするつもりなのか。
過る答えに顔を青くさせてる俺をお構い無しに、ツプリと何かが入る異物感。意思を持ち器用に動くそれが、樹の指なのだ気付くのに然程時間は掛からなかった。
「──やめっ……いぁっ! 痛い!!」
俺は初めて感じる痛みに、声を上げて抜いてくれと訴えた。だけど樹はその訴えなど素知らぬ様子で、さっき出した俺の精液を中に塗り込むように指を動かし続ける。
痛みもあるけど、何より不自然な場所で動く指が気持ち悪い。
「少し我慢して。すぐ気持ちよくしてあげるから」
「やだっ、痛い! 抜い……──んあっ!」
「!」
「……ぇ…」
何だ? 今の。
「ここか」
「ぇ、っあ! ……やだ!」
ある一ヶ所を擦られた時、痛みと気持ち悪さしかなかった場所からそれ以外の痺れるような感覚が生まれ、俺は痛みとは違う声を上げてしまった。
そして樹は執着にソコばかりを攻めてくる。
「やはっ、ぁ! いつ……きぃ、やだぁ……やぁ!」
「あや、気持ちいい?」
耳元で優しく問われた言葉に目一杯横に首を振れば、素直じゃないね。て笑いながら樹は指を動かし続けた。
最初1本だった指もいつの間にか3本に増え、部屋には耳障りな水音と吐息の混ざった甘ったるい声が響く。
下腹部から沸き上がる感覚が強さを増し、絶頂が近いんだと自分でもわかった。
「ぅっ、や……やだっ! 止め、ろ! やっ、……出るっ……!」
「いいよ、出して」
「や、……ッ──!」
わざとらしく耳元で囁くと、樹は感じる箇所を強く擦りあげた。その刺激が堪らなくて、先程達したばかりにも関わらず、再び絶頂を迎えてしまった。
「……ぅっ……はぁ、……ぁ」
立て続けに迎えた絶頂からくるダルさと疲労感から、俺は押し付けられていた壁に凭れ掛った。でも樹は、それで止める気は無いらしい。俺の中で動かしていた指を抜くと、今度は硬い何かを押し付けてきた。
「っゃ……も、……やめ……ろっ!」
「冗談、これからが本番だよ」
「え……」
「もう我慢出来ないから」
「ひっ、───!!!」
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