仰せのままに



「ねぇ、一口ちょーだい?」
「はい、どーぞ?」

よく晴れた春の日、喫茶ポアロには不思議な組み合わせの客がいた。警視庁機動隊の爆発物処理班、萩原とフリルの付いたネイビーのワンピースを着た女の子だ。小学生ぐらいの彼女と爆処の彼の奇妙な関係はとある事から始まっていた。

彼女はこう見えても、あの鈴木財閥の親戚の正真正銘のお嬢様。おかげで命を狙われる…なんて事もなく平穏無事に暮らしてきた。
とある事件とはそんなこととは大した繋がりもなく、ただ怪盗キッドの警備の際に人手として回されてきただけ。鈴木次郎吉が叩きつけた挑戦状を律儀に受け取った怪盗を捕まえるため、足りない人員にさかれただけだった。

たとえ相手が怪盗紳士だとしても、お嬢さまを危険に晒す訳にはいかないと、警備に当てられたのが萩原だった。子供相手に好まれやすい優男加減が買われたのだ。…ほかにもキッド相手に慣れている警官は回せなかったなど、大人の事情はあるのだが。
ちなみに大人数で待ち構えたキッドはまんまとその中に紛れ、獲物をかっさらっていったらしい。後々獲物はとある警官のポケットから見つかったとかいないとか。


そんなこんなで親しくなった彼らは、キッド騒動が終わった今でも仲良く食事をする仲になった。


「おいしーね!」
「そーだね」
二人で一つの大きなパフェを食べながらおしゃべりする姿はまるで親子だった。

「うえの苺食べていい?」
「ハイハイ、おじょーさま、どーぞ?」
大きな苺をスプーンに乗せて口元に運べば、パカッと空いた口に吸い込まれる。大きな苺は口から溢れそうになって慌てて手で押さえられた。

「おいひいよ、あま〜」
ニコニコと笑う少女を見て、萩原も眉を下げた。



「ね、けんじくん、私今度のお休みにお花見たい!今まんかい、なんだって!」
「はい、承りました。いいよ、いこっか」
萩原の答えを聞いてやったぁと手を突き上げたお嬢様は満面の笑みを浮かべる。
花が綻んだようなその笑みにポアロが少し暖かくなった。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -