黎明



すっかり夜は空気が冷え込み、地下にあるスリザリン寮は毛布から身体を出すのを躊躇うような寒さになった。サシャはいつの間にやら毛布から腕を出していたらしく寒さにパチリと目を覚ます。朦朧とした頭でヒンヤリと冷え切った腕を毛布に入れ込み、もう一眠りしようと微睡んだところで隣のベットカーテンが一定のリズムで揺れている事に気がついた。レギュラスは眠れていないのだろうかと思いつつも睡魔に負け、微睡みに沈む。
ふと布の擦れる音に意識を戻すと、ほんの一瞬眠っていたようだ。相変わらず隣のベットからは音がする。一瞬よぎった考えをため息と一緒に吐き出して、冷たい床にそろりと足をつけた。
睡眠を妨害された苛立ちを少しだけ込めて、思い切りカーテンを引く。その音にぎょっとしたレギュラスがベットの上で3センチほど飛び跳ねたのをサシャは見逃さなかった。
「眠れないの」
レギュラスの反応をみて少し鬱憤が晴れたサシャが小声で囁く。まだ夜明けには早く、2人以外の全員の寝息が聞こえてきた。
「考えることが多くて」
「デビュー戦で負けたら、とか?」
揶揄うように言葉をかけて、サシャが無遠慮にレギュラスのベットに乗り込む。いつもならあり得ない行動でも、彼のせいで寝られないことと夜の不思議な力が今なら何をしても許してくれる気がした。
「うるさいなぁ……」
文句を言いつつもレギュラスが横に動いてサシャの入る場所を空ける。それにニコリと笑ったサシャが冷えた空気と一緒にレギュラスの毛布に潜り込んだ。
「冷たい」
「文句を言うなって」
寂しんぼ、とサシャが呟くとレギュラスが軽く膝で小突いてくる。衝撃で毛布の隙間から冷たい空気が入り込んできてレギュラスが顔を顰めた。冷たさに慣れたサシャはそれを見て笑う。サシャは自分の笑い顔を見るとまたレギュラスが不機嫌になると思ったので毛布に顔を埋めた。ホッとするようなレギュラスの香りがふわりと香る。だんだんと暖かくなってきて微睡んでいると、レギュラスがくっつくように入り込んできた。
今日の昼からはレギュラスのクィディッチのデビュー戦だ。初戦はレイブンクロー対スリザリンだが、去年はスリザリンが優勝したからこそその後に対戦するであろうグリフィンドールに目を向けている生徒が多い。勿論、レイブンクローに勝たなくてはグリフィンドールとの対戦にはならない訳で。
クィディッチはどちらかのシーカーがスニッチを取るまで試合が終わらない。スリザリン生の中で最も責任重大な役職に、かのブラックが就いた。華々しいデビューを期待されて重責で眠れなくなっている親友にサシャは一晩だけ湯たんぽになってあげることにした。



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