純白のアザレア

それはまだ花が芽吹き始める前寒い冬が終わりこれから春が始まるであろう時期の話である

俺が初めてあの人にあったのは大学1年生の頃だった。あの頃は高校での友達と離れ一人暮らしを始め家賃やら光熱費やらでバイトに明け暮れる日々だったそんなときバイト先でよく珈琲を飲みに来るの友人からホームパーティーに誘われたのだ。いつも友人の前で
今月ももやしとお友達だよ…
と呟いたことが友人の中では引っかかっていたらしい俺にいいものを食べさせてあげたいという善意一心であった。俺はそこまでしてもらわなくてもと一度は断ったもののじゃあ普通に友達として来るというのは駄目か?というあからさまにしょぼんといった顔をした友人を断るなんてそんなの傲慢な王様か心のない人でなしくらいだろう。そんな訳で友人のホームパーティーに参加した。今考えればあのパーティーで俺の人生が180度変わった気がする、いや絶対にあのときである。そんなこんなで俺はさっき言ったような傲慢な王様…いや傲慢な社長に出会った。ぶっちゃけその人とはテレビでよく見かけていたが俺が興味のない経済の話であったりしたからあまり詳しくは知らなかったのだが友人のアルトリアの仕事仲間だったらしくアルトリア本人曰く仕事人間なので少しは休ませてやってほしいといった優秀な秘書のお陰?せい?でこのパーティーに来ることになったらしい、と他人事のように言ったが数年後俺自身がこの問題について頭を抱えることになるとは微塵も思っていなかった。

さて、昔話は置いておいて問題はこれからである。王様――常の立ち振る舞いが王様のようなので――との馴れ初めはまた今度、まぁ簡単に言えば俺がアルトリアの圧に負けて女装をしたあとに王様と二人きりになってあーだこーだあった後男同士でありながら同棲生活を始めたのである。
(そうその同棲生活が問題なんだ…)
俺は頭を抱えた文字通り反発性の高いソファに座りながら両手で頭を抱え込んでいた。明日は俺の誕生日なのである。毎年家族や友人に祝われていていたが今年は恋人である彼と過ごすのであろう―どうしてここまで広まっているのか…これはあのろくでなしのせいに違いない―と予定は何も入っていなかったけれど忘れてはいけない相手はかのウルク社のトップである彼だ恋人とはいえ完全な私用で迷惑をかけてはいられないましてや最近は忙しいと言っていたような気がするつまり今年の誕生日は完全なぼっちなのだいくら周りから明るいと言われる立香だったとしてもこれは悲しい気持ちになった
「こんなこと王様に言えるわけがないし…」
「ほぉ、何が言えないというのだ?」
「………おっ…王様!!?」
どうしてとか今日は早いですねとか言いたいことがあったはずなのに何一つ声に出せない今日大学の講座が午前中にしかなく自分が家に帰ってから考える時間はあるだろうと高をくくり独り言を呟いていたがそれを聞かれていた空は太陽が沈み始めていて自分が結構長い間考えていたことを知った
…いやまて王様はまだ俺の誕生日だとは言っていない…ここは1つごまかしt
「さて、何が言えなかったというのか?今日マーリンめから初めて聞かされた明日のお前の誕生日の事か?」
………ばれてーら。何ということだあのろくでなしめこんなところでその力を発揮しなくてもいいだろうに…立香は焦ったギルガメッシュに誕生日を教えなかったのは迷惑だろうと言う思いと伝えることによって祝ってほしいアピールをしているようで嫌われるのが怖かったからだこの男は意外にも不器用な甘さを持っていることから知られてしまった以上祝ってはくれるだろう…だがそれでは彼の仕事の邪魔をしてしまうことになるそれは本意ではなかったそしてそのことで彼の中で自分に存在が必要なくなる事が怖かった
「明日であるからあまり大きな準備は出来ないが今からやればディナーぐらいは用意できるか…」
こういう優しさが辛い俺がぼっちになるということを誰かから聞いたのだろうか仕事を切り上げてこんな早い時間に帰ってきてくれただけでも嬉しいのに俺の誕生日を祝ってくれようとしているそんな優しさに甘えるわけには行かない
「だっ大丈夫ですよ!!そんなやめてください…明日も仕事なんですよね?早く寝たほうがいいですよ」
「何を言う恋人の誕生日でも仕事を詰め込むような人間に見えるのか」
「…見えないですけど、けどっ」
「くどい、まぁ安心しろ我が知るより先にマーリンが知っていたことへの罰は誕生日が終わってからだ」
腰が痛くてはディナーが楽しめんからなぁと耳元で囁かれた俺の顔は今真っ赤に染まっているだろう彼は喉の奥でクックッと笑った
「明日1日限りであればお前のわがまますべて聞いてやろう何がいい?準備が必要なら言うが良い俺の財を持ってすべて叶えてやろう」
彼が言うと本当にすべて叶えてくれそうで俺は
「じゃあ明日抱きついてもいいですか?」
「それは…わがままではないだろうそれに」
そういった瞬間彼は俺を抱きしめた
「いつだってしてやる」
テレビの中で世界に影響を与えている人が…こんなにも美しい人が俺の恋人だというこんなにも愛おしい人が俺の…そう思うだけで幸せでわがままなんて何も出てこないただこの人の体温を感じるだけで幸せだったそんなこと恥ずかしくて言えないこの人のことだから気づいているだろうけど
「…はい俺世界一幸せです」
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