※新婚パロ




コトコトと鍋を煮込む音が耳に心地よく響く。
茶色い欠片を一つ入れれば鍋の中でゆっくり溶け出し、香ばしい香りがキッチンに広がった。欠片が完全に溶けたことを確認して、二つ目を手に取る。

「サーヤ」
「きゃっ!」

するといきなり、後ろから伸びてきた腕が首に回った。その腕が誰のものかなんて、わかりきってるけど。

「もう!都築ったら脅かさないで!」
「ははっ、悪い悪い」

私の頭よりずっと高い位置にある都築の顔を見上げると、悪戯が成功した子供のように笑っていた。
今みたいに、料理中の私を都築が驚かせることはよくある。そりゃこっちは料理してるから危ないけど、なんだか構ってほしい子供みたいでちょっと可愛い。

「お、今晩はカレーか!」
「うん。今日は忙しかったし、簡単に済ませちゃった」
「俺、サヤの作るカレー好きだぜ?」
「…カレーだけ?」

私が冗談めかしてそう聞くと、都築は苦笑した。

「もちろんサヤのことも。ってか愛してる」

希望通りの返答と、頬への優しいキス。お返しに私も低い背を懸命に伸ばし、都築の頬にキスを返した。
特に何の意味も持たない戯れ。何だかおかしくて、お互い笑い合う。

「ごめんね、ご飯出来上がるまでもうちょっとかかるの。先にお風呂入っちゃって?」
「いや、いい」
「でも…まだかかるわよ?」

首を傾げる私を見て都築はくす、と笑い、お玉を持っていない方…私の左手に自分の手を重ね、唇を耳元に寄せた。

「風呂は飯食ってから二人でゆっくり…な?」

腰に来るような低い、色の含んだ声に、思わず熱が籠る。見上げると、さっきまでの子供っぽさなんてこれっぽっちも無くて、都築は立派な男のひとの顔をしていた。それは凄くかっこよくて、今まで何度見とれたかわからない。
そんな彼が何を言いたいか、何を望んでいるかなんて、手に取るようにわかる。

だって、だって私は――


「……じゃあ、もう少しだけ向こうで待っててね。あなた?」

絡む左手をなだめるように、私は都築の唇に触れるだけのキスをした。
都築は驚いて、それから顔を少しだけ赤くして「ずりぃ…」と呟き、名残惜しそうに左手がほどける。
あ、ちょっと勝った気がする。そんな彼を見て私はそう思い、小さく笑ったが、都築と過ごす時間が惜しくて、早々と夕飯の支度に戻った。

左手の薬指には、銀色の指輪がきらりと光っていた。





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(だって私は)
(貴方の妻だもの)




サヤ/カメール♀
都築さん/バンギラス♂(1682)



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