「……何、そのカッコ」

恋人を自分の部屋に招いた緑咲は、彼女の姿を見るなりそう言い放った。
部屋の中へと招かれた女性…ココナは、自分の席であるベッドの上に座ると、不思議そうに首を傾げた。

「何って…私服だよ。せっかく招いてもらったのに、普段のカッコじゃ失礼だろ?」
「違うよ。俺が言いたいのはそういうことじゃなくて」

緑咲は呆れたように息をつき、ココナのばっくり開いた胸元を指差す。豊満な胸を持つ彼女にその格好はいささか刺激的で、隙間からはしっかりと谷間が覘いている。

「隠しなよ、それ」
「し、仕方ないだろ!?こうしてないとキツイんだよ!」

ココナは指された胸元を右手で隠す。見れば、彼女が着ているYシャツは第三ボタンまで開いていた。少しでもずれれば下着が見えてしまいそうだ。

「大体、危ないよ。そんなカッコで女性が一人で歩いてたら」
「はぁ?なんでだい?」
「何でって…」

わからないの?
眉をしかめるココナに、緑咲は少しいらついた。

「変な男に襲われても知らないよって言ってんの」
「襲われるぅ?」

あたしが?とココナは笑う。

「ないないない!だってあたし強いし!もしそんな奴がいたら返り打ちにしてやるさ!」
「…それ、本気で言ってんの?」

心の中で静かに沸いていただけだったはずの苛立ちが、はっきりと緑咲の感情に現れ始めた。
ひとが、せっかく心配してあげてるのに。

「じゃあ、さ」

緑咲はそう言うと、ベッドに座るココナのすぐ隣に腰を下ろした。二人は恋人同士。そんな彼の行動に、ココナが不審に思う理由はない。大人しく彼の次の言葉を待った。

「ぅわっ!」

そんな彼女の油断を、緑咲は逃さない。
ココナの肩を掴んでそのままベッドに押し倒し、両手首を真っ白なシーツに縫い付けた。
あっという間の出来事だった。ココナは一瞬何が起こったかわからず緑咲を見つめていたが、すぐに状況を理解し眉を吊り上げる。

「な、なにすっ…」
「こうやって押さえつけられたら、どうするわけ?」

ココナを組み敷いた緑咲はいつになく真剣で、その顔には苛立ちが混じっていることがココナにも感じ取れた。
ココナは慌てて唯一自由な足をばたつかせるが、上半身がベッドに倒された不安定な体勢では何の抵抗にもならない。

「こ、んなのっ、あたしの力なら自力でっ……あ、あれっ…?」

それならばと押さえ付けられた両手に渾身の力を込めるが、びくともしない。それどころか緑咲の押さえ付ける力は強くなる一方で、痛みを感じたココナは小さくうめいた。

「り、りょく…さ……?」

さっきまで余裕はどこへやら、ココナは不安気に瞳を揺らし緑咲を見上げる。
しかし彼女は頑固だ。こうしたところで先程の発言を訂正する気はないし、反省する気もないだろう。男に対する警戒心もろくに持たないままだ。

「……あんまり、さ」

今こうして組み敷いているのは、もしかしたら自分じゃないかもしれないのに。


「男を舐めない方がいいよ?」


耳元で低く囁くと、組み敷いた身体がびくりと震えた。

さて、この自信家な恋人にどうやってわからせてやろうか。
緑咲はすっかり大人しくなったココナを見下ろし軽く口角を上げると、誘うように薄く開いた唇に、自らのそれを重ねた。






ココナ/ボスゴドラ♀
緑咲さん/メガニウム♂(1682)





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