あの子は『彼』の、広い背中が好きだと言っていた。
密かに想っていたパートナーである『彼』のことを、あの子はいつも嬉しそうに私に話してくれた。

それがぱったりと無くなったのは、いつのことだったか。

何故すぐに気付けなかったんだろう。何故助けてあげられなかったんだろう。
自分の愛したひとが誰かわからなくなるまで、あの子は一人で戦っていたというのに。

いくら悔やんだってもう遅いことはわかってる。私は何もできなかった。それが事実。
それに今、あの子は幸せだ。仲間がいて、恋人がいて、笑ってる。
私の役目じゃなかった。あの子を幸せにできるのは、私じゃなかった。
ただ、それだけ。



「都築、」
「っと…なんだサヤ、寂しかったのか?」
「…ん」
「はは、今日はやけに素直だな」

からかうように笑う声、抱き締めてくれる逞しい腕、温かい胸。みんな好き。大好き。私の愛しいひと。

確かに私は、あの子に何もしてあげられなかった。でも、彼を幸せにできるのは私だけだと、そう信じたい。
自意識過剰?自己満足?何とでも言えばいい。
もう決めたの。
彼が笑うなら、私はなんだってしてみせる。過去を悲しむ隙さえ、与えないわ。

「都築」
「ん?」
「だいすき」


もう何もできないのは、嫌だから。






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(今度こそ救ってみせる)





サヤ/カメール♀
都築さん/バンギラス♂(1982)

あの子⇒ヒサ(飛紗)
『彼』⇒ジュプトル
飛紗の時は何もできなかったけど、恋人さんを幸せにできるのは自分だけだと思いたいサヤの話。




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