短編 | ナノ



私の日課。

隣のクラスの月島くんを、部活終わりに待ち伏せして一緒に下校してもらうこと。

一歩間違えたらストーカー行為ともとれるけど、ここは愛嬌で上手く誤魔化してる。


「月島くん!好きです!付き合ってください!」

「え、嫌だけど」

「だよね。じゃあ、今日から一緒に下校してください!」

「…は?」


そう告白したものの、撃沈してから早数ヶ月。

最初は本気で嫌そうにしていた月島くんではあるが、徐々に打ち解けて、今では用事があって私が先に帰ってしまうと、今日居なかったんだけど、と連絡が来る仲になった。

今日もそんなこんなで、ぼーっと暗くなる空を待ち合わせ場所から眺めてる。随分、日が短くなったなあ、なんて。もう少しで制服も冬服に変わる。


「帰るよ」

「あ、部活お疲れ!」


足音がする方を向けば、今日も疲れたと口に出さなくても顔に書いてある月島くん。

先にスタスタと校門に向かって歩いていく月島くんを追いかけて、隣に並ぶ。

特に何を話すわけでもないけど、私はこの時間がとにかく好きだ。


「あのさ、」

「うん、なに?」


珍しく口を開いたのは月島くんの方だった。

辺りは暗くて、外灯だけが私たちを照らす。


「僕たち、付き合う?」

「…え?」

「君がそんなに僕を好きなら付き合ってあげても良いケド」

「ええ!?本当!?」

「嘘で言うわけないじゃん」

「え!付き合う!付き合ってください!」


そんな素っ気なくも思える告白をしてもらって、念願叶って、月島くんの彼女になることに成功した。月島くんの根気負けって感じだけど。


「ええ!?本当にいいの!?」

「はあ?なに?冗談だと思ってる?」

「いや、その、夢みたいで…!」


思わず、赤くなっているであろう頬を、冷たくなった両手で覆えば、月島くんは、何その顔、と笑った。


「毎日、熱心に待ち伏せされたら、さすがの僕も傾くって」

「それはどうも、スミマセン」

「好きだから許す」

「えっ!?」


イジワルに笑うその笑顔が、好きで好きで、好きすぎて、ダメだ。泣けてきた。


「す、好きって…言った…」

「悪い?」

「嬉しいです…!」


月島くんの彼女になってから、数日。

私には、彼氏が出来たらやってみたいことがいくつかあって、その中でも一番やりたいなあって思っていたことを不意に口に出してみた。


「お揃いの服着て、お出かけってどう思う?」


恐らく、は?普通に嫌なんだけど、とでも返答が来そうな質問。こんなの月島くんが好きな人なら容易く想像できる答えだ。

チクショウ失敗した!彼女になったからって調子に乗ってしまった!


「…お揃い?」

「お、お揃いで…」

「出かけたいの?」


いつもの帰路で、月島くんは眉を歪めてそう言った。何か考えるように口元に手を当てて。


「Tシャツ色違いくらいならいいケド」

「…へ?」


思ってたのと違った。

想像してた返答と違いすぎて、頭の処理が追いつかない。きっとポカンと口開けてだらしない顔してるんだろうなあ、今の私。


「…なに」

「え!?本当!本当に!?」

「誕生日プレゼントによろしく」

「た、たんじょう、び?」


誕生日!?待って、誕生日ってなに!?


「ええ!いつ!?」

「27日」

「嘘!もうすぐじゃん!」

「デートする?」

「えっ!え!?する!」


帰宅して、その勢いのまま食い入るようにネット検索。

彼氏、Tシャツ、オシャレ。彼氏、お揃い、Tシャツ。単語を変えていろいろ検索するが、心拍数は上がるばかり。

いやいや待ってよ!まさかあの月島くんがお揃いしたいなーなんて戯言に乗ってくれるなんて思わないじゃん!しかも誕生日だって!もしかしなくてもその日に初デートってことだし!


「デートってことは、早めにTシャツ渡さなきゃ」


うん、これに決めた。色違いのTシャツ。これからの季節にも着やすそうなオーバーサイズのTシャツを色違いで注文。

喜んでくれるかなあ、とか、本当に着てくれるのかなあ、とか色んな思考が頭を巡って不安だったけど、無事届いたTシャツを見て買ってよかった!とひとりで盛り上がった。


「お待たせ」

「あ、お疲れ!」


いつものように部活終わりを待ち伏せ。


「これ!ちょっと早いけど誕生日プレゼント!デートの日に着てください…」

「本当に買ってくれたんだ」

「え!?」

「ありがとう。じゃあ、日曜日ね」


楽しみにしてるから、と月島くんはいつもより優しく笑う。私はバクバクと音を鳴らす心臓を抑えながら、精一杯、頭を縦に振った。


「緊張する…」

「来るの早くない?」

「えっ!?あっ!」


背後からの声に驚きつつ、振り返れば、私が選んだTシャツを見事に着こなした月島くんが立っていてまた驚いた。


「に、似合う…!」

「本当に色違いにしたんだね」

「うん!カッコいい!」

「ありがとう」


結構気に入ってる、と照れているのか、私から目を逸らしながら言う。


「じゃあ、行こっか」


そういって、差し出された彼の手をぎゅっと繋ぐ。


「ねえ、月島くん」

「なに?」

「お誕生日おめでとう」



suger over



(200927)
Happy Birthday ツッキー!

← main







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -