その晩、無事に戻ってきた左陣達を、子供たちは満面の笑顔で出迎えた。
 食事をしながら、口々に昼の出来事を報告する。

「ほう、縛道を習ったのか」
「うん。でも、おれはできなかった」
「そうか。儂に似てしまったかな?」
 西治の言葉に左陣は申し訳なく思う。自分が鬼道を使えないことは何とも思わなかったのだが、息子に遺伝すると解っていたら、使えていたら良かったのにと思ってしまう。
「うん。ととさまににててうれしーよ!おれもけんのみちいっぽんでいくんだ!」
 格好いい言い回しはどうやら春水に教わったらしい。立ち上がり、箸を行儀悪く刀に見立てて構えて見せる。
「こら、西治っ。お行儀悪いわよ」
「はあい」
 三夏に怒られて舌を出し素直に返事して座り直す。
「で、じゅういちばんたいにいくんだ!」
「何?十一番隊だと?七番隊ではないのか?」
「うん。けんどーがつよいのじゅういちばんたいだから」
「…そうか?」
 残念そうな左陣の様子に三夏が思わず噴き出す。
「三夏?」
「ふふ。お父様達と同じね?というか私も思わず同じこと思ってしまいましたけど」
「そうか…七番隊には誰か残らぬのか?」
「西造は七番隊って言ってくれたわ。ね?」
「うん、おれはここー」
 三夏の言葉にこっくりと頷く。
「…南槻は?」
「あたしは、ばあばのおてつだいするの」
 にっこり笑って報告をする。
「なんと、八番隊か…」
 残念そうな声だが、七緒の手伝いという言葉に少しだけ引っかかったらしい。言葉を濁している。
「何故にお手伝いなのだ?」
「あのね、ばあば、いっつもじいじさがしてるの。でも、じいじっていっつもあたしや夏七ちゃんといっしょでしょ?だから、あたしがじいじを、ばあばのところつれてってあげるの」
「成程。それは良いことだ。たくさん助けてあげなさい」
「うん!」
 七緒を気の毒に思うことがあるので、娘の優しさに胸打たれた左陣は大きく頷き、娘の考えを支持した。

 幼いながらも明確な目標を持つことで会話も弾む。子供たちの成長の早さを喜ぶべきか惜しむべきか。少々複雑な心境ではあるが、頼もしい事には違いない。
 何より自分の力を受け継いでしまったらしい西治が、目標を持ったことで前向きになれたことは何より嬉しいことだ。
 その前に、十一番隊を是正したいくらいだが。

「まあまあ、一秋兄様もいらっしゃるし、八千代ちゃんもいるし、今の十一番隊は大丈夫ですよ」
「…そうか、それもそうだな」
 妻の取りなしに考える。一秋は昔と変わらず少々やんちゃな所があるが、前向きで素直な一面もいまだ持ち合わせている。
 柄の悪い輩が多いには違いないが、自分の息子は大丈夫だろうという、親馬鹿的な妙な自身もあったりする。


「早いものだな…」
「ええ。本当に」
 子供たちの頼もしい目標に二人は頬笑み頷きあったのでした。



おしまい


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