「まだだいじょーぶ?」
「うん。まだまだ大丈夫だよ。決まらなくても、勝手に配属されるしね?」
「そーなの?」
「そうよ。一応、どこの隊に入りたいか希望は聞かれるけれど、みんなが同じ隊に行きたいって言ったら。そこだけがいっぱいになってしまうでしょう?」
 三夏が説明をする。
「だから、いくつか希望を聞いて、希望がなければ順番に他の隊に振り分けされるわよ。ただ、お母様が説明されたように、力には種類があるから、得意の隊に振り分けもあるわね」

「とくいのたい?」
 六冬が首を傾げる。姉の説明がちょっと難しく思えたらしい。
「えっとね。一番特徴があるのが、四番隊ね。怪我を治してくれるでしょう?」
「うん」
 もう一人の姉の夏四が四番隊で、目の前で転んでしまいあっという間に治してくれたことがあったので、この説明は理解ができた。大きく頷く。
「怪我を治す鬼道はちょっと特別なの。だから、そういう力が得意な人が一番に四番隊に選ばれるのよ」
「そーなの?夏四ねえちゃんも?」
「そうよ」
「だからって、ずっと四番隊という訳でもないのよ。四番隊で治すことを勉強したら、他の隊へ行くこともできるの」
 三夏が頷くと、七緒が説明に付け足しをした。
「どーして?」
「今、狛村隊長と射場副隊長がお仕事に行っているでしょう?」
「うん」
「でも、四番隊は行っていないの」
「うん」
「もし、怪我をしても、今行っている七番隊の誰かが治す勉強をしていたら、大きな怪我をして直ぐに全部は治せなくても、応急処置といって治すお手伝いはできるのよ。帰ってきてからゆっくりと四番隊で治してもらえるの」
「すげー、それ、すげー。じゃ、おれ、さいしょ四番隊になるー!それから八番隊にくるー」
 母の説明に六冬は張り切った。誰かの手伝いができるという事に格好よさを見つけたらしい。
「六冬君は優しいねぇ」
 息子の優しさと思いやりに春水は嬉しそうに目を細め頷いた。
 四番隊は十一番隊から役立たずと呼ばれる程、戦いには向かない隊である。無論、席次が上に上がる程戦闘能力も高いし、実際隊長の烈も、副隊長の勇音も戦闘能力は他の隊に劣らない。
 七緒の説明も良かったのだろう。誰かを手助けすることに、格好よさを見つけたのだから。年頃の男の子は普通は一番に純粋なる強さに憧れるものだろうからだ。

「まあ、すごいわ。皆。目標が決まっちゃって」
 三夏が頬に手をあて目を丸くして驚く。自分が子供たちの年頃の時は、まだ何処かの隊に所属しようなどとは思っていなかった。兄達は大きくなっていて、特に一秋などは目標を決めていたが、冬二はまだで目標を持っていなかったこともあって、三夏も漠然と死神の訓練を受け始めていただけだからだ。
「六人もいると、競争意識の芽生えも早いのかしらね」
 七緒も驚きの表情を隠さない。
「そうね、誰か一人が言いだせば、自分もって思ってしまうものかも…」
 年が多少離れていると競争意識は弱い。冬二はそれほどでもなかったのかもしれないが、三夏も夏四も随分とのんびりと構えていたものだ。学院に入ってからようやく真剣に考え始めたと言っても過言ではない。
 一番しっかりした目標を持っていたのは唯一長兄の一秋だけで、その一秋は恐ろしく早く優秀な成績を修めて十一番隊へと入隊を果たしたのだから。
 冬二など兄と比較されて随分困ったと、笑って話してくれたことすらあった。

「うん。競争と目標は良いことだと思うわ」
 三夏が大きく頷く。
「あら」
「おや」
 七緒と春水が顔を見合わせる。三夏が珍しく乗り気だからだ。
「ちょっと、一秋兄様を思い出して」
 何より夫の左陣も常日頃から、総隊長への恩義を口にしている。誰かの為にと思う事はより強さを増すのだろう。
「私も、頑張らなくっちゃ」
 子供たちには負けていられないと大きく頷く。夫の手助けになれるように、自分の得意分野を伸ばそうと改めて思ったのだ。





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