「けんどー?」
「そう。やるかい?」
「やるっ!!」
 春水の問いかけに、西治は祖父を仰ぎ見て元気よく頷いた。
「そうそう。鬼道ができなくて剣道だけで強い人はもう一人いるんだよ」
「もうひとり?だあれ?」
「十一番隊隊長の更木隊長」
「ざらきたいちょー?」
「そう」
「すっげー!」
「と、言うか十一番隊は鬼道が得意な人は少ないねぇ」
「ほんと?」
 二人も鬼道が使えずとも隊長と呼ばれる立場にいると言う事実は、西治の気持ちをかなり勇気づけた。その上、隊全体で鬼道をあまり使えなくても大丈夫だという事も嬉しい事だ。自分だけじゃないという事は何より嬉しい。
 しかも父も剣八も、恐ろしく強く大きな存在である。

「すっげー!すっげー!おれも十一番隊はいるー!」
「あらら、そっちなの?八番隊にきてくれないのかい?」
 自分の隊を選んでくれない事に春水はかすかな衝撃を受けて、がっくりとうなだれる。
「だって、十一番隊はつよいんでしょ?きどう、とくいじゃなくていいんでしょ?それに、一秋おじちゃんもいるよね?」
「うーん、強いけれどねぇ?」
 自分の長男一秋も進んで十一番隊に行ってしまっているだけに、春水としては少々複雑な気分である。

「じいじ、あたしが八番隊にいくよー」
「南槻ちゃん!!」
 孫娘に言われて春水は瞳を輝かせた。
「それでね、ばあばのおてつだいするの」
 南槻が瞳を輝かせて続けた言葉に七緒が嬉しそうな表情になり、春水の眉間に微かに皺が寄る。
「え?それって…」
「あのね、ばあば、いっつもたいへんでしょ?だからあたしがおてつだいするの」
「まあまあ、南槻さん、何て嬉しい事を言ってくれるの」
 七緒が満面の笑顔で孫娘を抱き頬を擦り寄せる。

「あらあ…七番隊には誰も残ってくれないの?」
 今度は三夏が寂しそうな表情になってしまった。
「ぼく!七番隊になるよ!」
 西造が母にべったりとくっつく。一番母親にべったりな西造らしい発言だ。
「西造っ、嬉しいわっ」
「あたしも、あたしも、七番隊っ!」
「なぬっ!夏七ちゃん!なんで七番隊っ!!」
「だって、三夏ねえちゃんといっしょにおしごとしてみたいもん」
 年の離れた兄と姉と、いつか一緒にいたいと言う想いを抱いていたのだろう。
 中でも七番隊を選んだのは純粋に八番隊と一番近いからという理由もあるし、他の隊に比べ年の近い甥姪と良く遊ぶ為、一番出入りしている隊でもあるから、自然に頭に浮かんだものと思われる。

「ええーさみしいなぁ…。秋五君と六冬君は八番隊だよねぇ?」
「んー?おれっ、一番隊っ!!」
 秋五が珍しい隊を挙げたため、春水も七緒も三夏も驚きの表情になった。
「え?一番隊?なんで?」
 春水が思わず驚き問い返してしまう。
「だって、山じいじ、いちばんつえーもん!」
 秋五は瞳を輝かせて両手に拳を握り締めて興奮気味だ。
「え?山じいの事誰か教えた?」
 春水が思わず七緒と三夏を仰ぎ見る。二人とも無言で首を横に振る。
「うきたけたいちょーが、おしえてくれたよ。ととさまとおじちゃんのししょーだって」
「浮竹めぇっ…」
 思わぬ伏兵がいたと言わんばかりに思わず唸る。
「おれもきいたー」
 六冬も手を挙げる。どうやら息子たちが聞いたようである。ちょくちょく遊びに来ては、何か話をしていると思っていたのだが。そんなことまで話していたのかと驚く。
 我が子たちが相手を見つけ滅多に十三番隊へと来なくなった代わりに、今一番小さな子供のいる七番隊と八番隊に体調が良ければ足を運んでくる。根っからの子供好きなのだ。
 春水にしてみれば、緑がさっさと鉄左衛門と結婚して子供でも作ればいいのにという気分だ。葉太と夏四は当然のことながら、結婚はまだまだ先だとかなり矛盾した事を考えているのだが。

「まさか、六冬君も?」
 恐る恐る問いかける。
「んーん。でも、どーしよ。みんなかんがえてるんだ?」
 何処かの隊へ行きたいとは考えていなかったようで、逆に皆の考えに驚いているようである。目を丸くして首を傾げる六冬の様子に、春水は安堵したようだ。
「そんなに急がなくってもいいよ。まだまだ学校にだって入っていないだからねぇ?」



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