時間は3時。いつも通りの時間にいつも通りノックの音が響く。短く「入れ」とだけ返すと扉が開かれた。 「今日もお仕事ご苦労様」 柔らかい笑みを浮かべた名前が部屋に入ってくる。紅茶のいい香りが鼻をくすぐる。 いつも通りの時間にいつも通りの来訪者、いつも通り用意された紅茶。何もかもがいつも通り。 そんな考えを巡らせていると紅茶と一緒に目の前にケーキの乗った皿が置かれた。 「これは?」 「ケーキよ」 見てわからない?と名前は小首を傾げたが、生憎私が聞きたいのはそういう事ではない。 「今日は誰かの誕生日か?」 いつもならない苺の乗ったショートケーキを見つめながら名前に問い掛ける。しかし、名前は笑みを絶やさぬまま「違うわ」と返してきた。 誕生日でないならば何かの記念日かとも考えたが、私と名前が付き合い始めた日ではない。初めて出会った日でもない。今日という日がいったい何の日なのかまるで検討がつかない。 そんな私を見下ろしながら名前はただ笑みを浮かべ「きっと貴方にはわからないわ」とだけ告げた。 貴方と付き合い始めて1000日目 (こんなくだらない事を祝おうとする私の気持ちなんて、きっと貴方には一生理解できないわ) [back] |