名前は兄上のお気に入り。兄上好みの可愛らしい人間の女性。愛くるしい笑みを振り撒きあらゆる者を魅了する。あのネイガウスでさえ、名前には笑みを見せ、柔らかい対応をする。




ほんの少しの興味。




兄上には何度も名前には触るなと念を押されたが、どうしても試したい。その手は、腕は、足は、首は、どのぐらいの力を入れたら壊れるのだろう。

名前を壊したら、きっと兄上は血相を変えて怒るに違いない。ネイガウスも本気でボクを殺しに掛かってくるだろう。


それはそれで面白そうだ。


自分の欲を満たすためだけに目の前にいる名前に手を伸ばす。始めはそっと触れて、徐々に力を入れてみよう。そんな考えを巡らせていたら、それまで前を向いていた名前がボクを振り返った。


「はい、アマイモンにこれあげる」


名前の首に伸ばしていたボクの手を名前の手が柔らかく包み込む。いきなりの事に目を瞬かせていると名前の手がそっと離された。ボクの手には可愛らしいピンク色の包み。ほんのり甘い香りが漂う。


「クッキー焼いたからね、プレゼント!」


名前の花のような笑みが視界に映る。ドクンッと鼓動が高鳴った。


ああ、そうか。いつの間にかボクも…









彼女の笑みに魅了されていた
(……名前、ぎゅってしていいですか?)(いいけど…加減してね?)(ハイ、壊さないように気をつけます)








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