「エルシャール、私もう人生に疲れたわ」

「は?」


それまで私の部屋のベッドに寝転び大人しく読書をしていた名前がいきなり突拍子もない事を言い出した。そのため反応が追い付かず、つい疑問形で反応を返してしまう。


「だからね、人生に疲れたの」


まだたったの20年しか生きていない彼女がもう人生に疲れたと繰り返す。何があったのか気になるところだが、彼女は結構な面倒臭がり屋で理論家だ。きっとまた何か誰も気にも留めないような事に思い悩み、考えるのに疲れてしまっただけに違いない。


「人生に疲れたと言っても、君はまだ人生の半分も生きてないだろう?」

「明日死んだら人生の半分以上生きてる事になるけどね」

「縁起でもない事を言うんじゃない」


ベッドに投げ出した足を左右交互に曲げたり伸ばしたりしながら遊ぶ名前に歩み寄り頭を撫でてやりながら言葉を紡ぐと、彼女からは縁起でもない言葉が返ってきた。確かに人間は何時その寿命を終えるかはわからないが、明日死んだら…なんて冗談でもあまり聞きたくない。軽く叱咤するかのような言葉を返し名前の頭から手を離す。すると彼女はおどけるように舌を出した。


「だって未来の事はわからないもの。だから将来私は何をしてるんだろうとか、エルシャールはまだ教授をやってるのかとか考えてたら疲れちゃったの。人生って、本当に考える事がいっぱいで嫌になっちゃうわ」


閉じた本の上に顎を乗せダランと四肢を投げ出した彼女の言葉を聞き、彼女が疲れたと言った理由を把握した。なんだ、そんな事か。そう言ったらきっと彼女はそんな事とは何事だと怒るに違いない。しかし、3年後も5年後も変わらない事がただ一つ。








君の傍には変わらず私が
(…とは思っても口に出すのは難しい)








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