メカクシ団短編 | ナノ


*世話焼きは相変わらず


「わーっ!?」

お店を出て数分も経たない内に降りだす、突然の雨。今日、買い出しの当番だった私はスーパーに来ていた。荷物もそこそこあるし、此処等辺は交通量が多いから下手に急いで事故を起こす訳にはいかない。仕方ないからゆっくり帰ることにした。

「うぅ、寒い………」

段々と強まる風雨で体はずぶ濡れで冷える。まだまだ暑い季節であろう筈なのに、やはり悪天候ではそうもいかない。最初はアスファルトに染み込んだ熱を雨がじわじわと侵すことでむんむんとした空気だったが、それも今ではただの寒さに変わっている。

おまけに車が水溜まりの上を通過した際の水飛沫が私を襲うわ、滑って転けるわ。もう、厄日だ。

寒さで冷えた体はガタガタと震え、歯は時折カチカチと鳴る。くず…ずずっ、と垂れてきた鼻水をすすった。

「あと、もうちょっと!」

残り10分もしない内にアジトへ着けるだろうと意気込んだその時。

「ひなたー!」
「ずっ、…?………えっ、セト!?」

向こう側からバシャバシャと走りながら私を呼んだ青年は、緑の服を着ているセトだった。傘をさしながら走ってくるのは、風雨の中では大変だったろうに。

「セト、なんで……」
「…はっ、キドが、ひなたが、まだ買い出しに行ってる、途中なのに、って言ってたから、っす」

途切れ途切れに言葉を紡ぐセトはかなりのお世話さんというかなんというか。凄く優しい。きっと、カノなら「濡れるのは嫌だからね」なんて言って来てくれないだろう。セトまで風邪をひいちゃうかもしれないのに。

「ぐずっ、ありがと!」

御礼を言えば、優しく微笑んだ。

「じゃあ、早く帰ろうっす」
「うん、セトまで風邪ひいちゃ駄目だしね」
「それはひなたもっすよ」
「いいのいいの!私はもう風邪ひいてるも同然だしっ」
「それじゃ、尚更早く帰らないとダメっすよ!悪化するじゃないっすか!」
「わーっ、いいよ傘なんて!セトが使って!!」
「いやいや、ひなたが使うっす!」
「わっ、本当にいいってばー!」
「ダメっす、ちゃんと使うっす!!」

なんて騒ぎながら、アジトまで仲良く帰りました。それで、傘の押し合いをした結果、2人仲良く風邪をひきました。

でも、セトが迎えに来てくれたり、私が風邪をひかないようにしようとしたりしてくれた事もあったので、風邪はひいちゃったけど、結果オーライでいいかな、なんて思います。

「でもやっぱり風邪ってキツイ……」

翌朝、熱に侵されてベッドに寝込む私と、セトがいました。


*セトかっこいー。私は傘を貸して寝込んだことならあるなあ。

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