メカクシ団短編 | ナノ


*なんでそんな顔するの

じとっとした視線をずっと一定方向に向けている。その視線の先の人は、居心地が悪そうだ。寝そべりながらも、視線を気にしている模様。だけど、私にとってそればはどうでもいい。

「ひなた、何?」
「…………、別に」

よく考えるし、思う。何で修哉はいつも飄々として笑ってるの。泣きそうな時も、寂しい時も、悲しい時も。見られたくないときは、直ぐに欺く。私だって、修哉の事は言えるような立場ではないけれど。それでも、だ。

「何かあるんじゃないの?」

―――やっぱり、心配なんだ。

「………私さあ、修哉の過去、見たことあるんだよね」
「…っ!」

ぽつり、呟いた言葉に修哉は目を見開いた。なんで、と。一気にぐらりと揺れた修哉の目。その色は、感情がごちゃ混ぜで軽く混乱している。不安定が、修哉を襲った。修哉にとって、『目を知る』は、厄介な能力だろう。なんでも知ってしまうんだから。例えば、感情。

「見たくて見たんじゃないんだけど。……なんで、泣いてるクセに隠すの?欺く必要は、ある?」
「………」

別に、責めてる訳じゃない。ただ、知りたかっただけ。修哉はいつも笑うクセに、本当に笑ったとこなんて見たことなんて殆どないから。気になっただけ。…私だって、修哉に負けず劣らず嘘を吐く嘘つきだ。もしかしたら、私の方が嘘つきかもしれない。

「寂しいのに、欺くの。修哉辛くないの?修哉の本心は、泣き叫んでるように感じるんだけど」

ほら、私も隠してるんだ。だけど、偽って嘘吐いて笑ってるの。私はあの日を切っ掛けに、壊されて、ボロボロになって、精神不安定になって。悲しみと辛さが生んだ自傷行為が、狂気を生んだ。そして、嘘が増えた。まるで、嘘が本当のようで、本当が嘘のような、わからなくなった世界。ぐちゃくちゃな世界に、ひとり。今の私が、本物か嘘なのかもわからないくらい。

「修哉、痛くないの?」
「………」

うつ向いた修哉の顔は見れない。だけど、きっと今耐えてる。泣きそうなんだ、辛くて悲しくて。修哉は、欺く事に慣れてしまったから。

「修哉、」

名前を呼んで、そっと頬に触れた。ピクリと反応をする修哉。それさえも、拒絶に見えた気がした。悲しいなあ。それから私は、左手で修哉を撫でて抱き締めた。きっと、驚いてる。

「ひなた……?」
「修哉は、私みたいになっちゃ駄目だよ」

嘘を吐くこと、感情を忘れること、偽ること、見失うことを、恐れず、何も感じなかった、慣れた私のように。歪に笑うピエロだ。

「私になったら、終わりだから」

今、笑った顔さえ歪んでるのかな。歪みと亀裂ばかりの私。修哉には、そうなってほしくないなあ。だって、大切な―――……。

「ふは、なんでそんな顔するの?」

する必要なんてないでしょう。ねえ、笑って。私、修哉の泣き顔とかは見たいけど、好きじゃない。修哉の笑顔が好きなんだよ。今のは、きっと本物だよ。

「ねえ、笑ってよ」

じゃないと、私、笑えないよ。今のは、嘘かもしれないけれど。


(なんて、ね。)
(嘘つきが言っても意味ない)


*何か変。展開おかしいかな。書きたかったヤツから脱線してしまった。次はちゃんとあれを書こう、うん。

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