◎ これって強制連行じゃない? 母さんを殺してから1ヶ月経った。嘘か本当か。なのに、私は逮捕されない。嘘、本当?何故ならば、無にしたから。あるものを、ないものに。私って、結構狂気?死んだのに忘れてる、亡骸を見て笑ってた。嘘だけどさ。はは。 デパート内をふらり歩く。特に用事があるって訳でもないけど、本とかパソコンを見ようかな。暇だし。フードを被り、スタスタと歩いた。 「ねぇ、一緒に遊ばない?」 途端、がしり、腕に力がかかった。うわあ、面倒パターンきたよ。いやだな、私男だよ?女に女とか、なに、そーいう趣味?って言っても仕方ないか。まさか私が女だとは思うまい。 「ごめんね、用事があるんだ」 「えぇ、いいじゃない」 しつこいなあ、うざいなあ。こういう奴、ぐちゃぐちゃになればいいのに。私の中の狂気が嗤う。流石にしないけどね。 「俺さあ、アンタみたいな奴、嫌いなんだよね」 手っ取り早い方法を行使する。嘲笑を浮かべる私に、憤怒する女。怒りに顔が真っ赤って、こーいうのなんだ。ていうか、声かけなければこんな事にならなかったのに。 「な、なんですってぇ!?」 うざい、ぴーぴーうるさい。 鳥かよてめーは。ほら、死に際に死にたくないとギャンギャン命請いをするヤツとか、負け犬の遠吠えのような。眉間に皺がよる。こういうの、嫌いなんだ。彼奴、思い出しちゃう。だから、無視して去ることにした、ら。 「謝りなさいよ!」 謝る価値ないんだけどなあ。事の発端は君なんだから、と自己解釈と罪を擦り付けて。そのかわり、重罪なら背負ってる。 「………」 「なんとか言いなさいよ!」 だんだん周りがざわざわする。目立つの嫌いなんだけど。女って本当面倒くさいよね。無駄に声が高くて響くし、しつこいから。仕方ない、そうくるならさ、 「ひっ、目が、あ、かい…?」 「いい加減、うざいんだよね」 小さな悲鳴が聞こえた気がする。だけどいいや。全部なかったようになるんだから。 ほら、消えろよ。 閉じた目を開けば、さっきの景色はなかった。 「ふう、」 一件落着と安堵していると、気配を感じる。これは、1ヶ月以上前にあったあの青少年の。あとは、知らない。ただ、面倒事になった。たぶん、能力者たちだろうから。厄介事には巻き込まれたくないんだけどねー。そうもいかない、甘くないというのが現実で。 「お前、ちょっとこい」 「お前この間のヤツじゃん」 「……………」 「…知ってるのか?」 「1ヶ月以上前にねー」 ほらほら、早速だよ。予想はしてたけどさあ、やっぱりこうなるのって嫌だよね。嫌な予想は当たってほしくないというか。多分、能力について根掘り葉掘り探られるんだ。どっか逃げ道ない?それか現実逃避したいなあ、直ぐに。ていうか、私のこと仲間に言ってなかったんだ。意外。 「大丈夫?」 「…………」 ああ、やだなあ。コイツの目、似てるんだ、自分と。陰り濁った眼。一筋の光さえ入らない暗闇。 「カノ、早くしろ」 何、やっぱりこれはお決まりの展開、お持ち帰り!ですか。行くなんて言ってないんだけど。関わりたくないんだけど。私の事無視してるって、アレだよね。その人の意思は関係なく連れ帰る強制連行みたいな。もしくは誘拐?いやいや、如何にも下手くそそうな連中だよ、有り得ない。というか、私を離せ帰らせろ。 「帰りたい」 「あはは、無理だよ」 ですよねー。えー。うん、やっぱりこれ、強制連行だよね。 関わりたくなーい。 |