メカクシ団2 | ナノ

笑う道化師に赤い花を

ザーザーと雨が降る。傘もささず歩く私は異様な目で見られる。雨に濡れるのは嫌いじゃないし、むしろ好きだった。それに濡れても構わなかった。ただ、夕暮れの街を歩いているだけ。外に出たのは雨が降るから。

「きゃー!!」
「殺人だ、……!」
「誰か倒れてるぞ、大丈夫か!?」

突然ざわめき出した周り。悲鳴が飛び交い、人が逃げ惑う。周りをぐるりと見渡した時、視線を感じた。その気配を辿れば、私と同じように危機が迫っていても飄々として口角をあげ、笑う青少年。どうでもいいのに、何か違和感がある。

周りの時が停まったように感じる空間が数秒続いた。そして、―――彼の瞳が赤く染まった。途端わからなくなる彼。彼は能力者か。彼がわからない、これはどういうこと。まるで、仮面が彼を覆うよう。仮面、わからなくする仮面、…………嗚呼、解った。

―――彼は、

「嘘つきだ」

次の瞬間、私の体はぐらり傾き揺れる。周りは、哀れみの目を私にむける。きゃあきゃあ騒ぐ。表面上は他人を心配するように。でも、内心は自分じゃなくて安心する。それを私は、抵抗することもなく、最後に彼を見た。まだ、私を見て笑っていた。

ぐっと首にまわった腕。首を締めらそうな感じがする。

「動くな!動けばコイツを殺す!!」

首筋に、ナイフをつきつけられた。冷たい、ナイフが。

周りは、ざわめきを増す。警察沙汰はごめんだなあ。

ふっと笑い、瞼を閉じて開けて。赤くなった視界。そうして、後ろを振り替える。殺人者は、ナイフを降り下ろそうとしていた。だけど、

パリン、

無機質な音が響いたら。

私は歩道の真ん中に佇んでいる。まるで、さっきの情景がなかったかのような町並みは、私の能力でかえされた。あったことを、なかったように。あるものを、ないものに。

「ねぇ、」

だけど、1つ欠点があるとしたら。それは、私と私以外の能力者の記憶は、変わらないということ。能力者相手には、相手の能力を止めるだけであり、私の能力を使い、効かせることは出来ても記憶までは出来ない。なんとも不便だ。

「なに、」
「君、おもしろいね。」

笑った彼。目は、赤くない。

「別に、」

ニヤニヤと笑う彼を無視して歩く。もう出会わなければいいなあ、と思いながら。だって、彼は欺くから。

例えば、ほら。
―――自分のように。

笑う道化師に赤い花を