大きな迷宮の側に誰かが倒れていた。

「…っう、いたい」

むくりと起き上がる彼女の服装は、簡素ではあるが、高価そうな服だ。彼女によく似合う色合いでおしみなくさらけだされた白い肌。長い黒髪は艶があって綺麗だが、痛みが端麗な顔を歪ます。

「ジュダル……ジュダル、どこ?」

ジュダルという名前をぽつりと呟き探す。名前を口にした途端、くしゃっと泣きそうになる顔。

「ジュダル、ジュダっ……ふぅっ…」

だんだん涙が溜まり始め、ウルウルとする瞳。ポロ、と1粒水が落ちると、またポロ、と落ちる。だんだん抑えられなくなり、ついにボタボタと溢し始める。

「……、ひっく、」


泣き喚きそうになる瞬間、男の程好い耳障りのいいテノールが聞こえた。はあはあと息を切らすところから、必死で探していたことが伺える。彼女を見た瞬間、安堵の息を出し、名前を呼んだ。

「シア!」
「ひぐっ、……ジュダル、」
「おわっ!?」

ガバッとジュダルに飛び込み押し倒しつつ抱きつく。うわあああああんと豪快に泣きだした。ジュダルはシアの頭を優しく撫でながら抱き締める。

「ジュダっ、…る、ぅう、……っ」
「大丈夫か?」

こくりと小さく頷くシアを見ると、むくりと抱き締めたまま起き上がる。

「ジュダル、ジュダル、ジュダル」

温もりを求めるように、不安を掻き消すように名前をひたすら呼ぶ。そんなシアを安心させるように、そっと抱き寄せて顔を寄せた。

「目、閉じろ」

そうして、キスをした。

「んっ、…ふぅ、っ、」
「……っ、」

貪るように喰らうように何度も何度もキスをする。始めはついばむように、だんだん深さを増すキス。最高は舌を絡めて離さない。

「ん、んんっ、」
「っは、………シア」

キスをようやく終え、キスの余韻に浸る彼女を優しく強く抱き締めた。

もう、大丈夫だから。

そう思いを込めて、大切な彼女を離さないように。


奇跡の中でしか出逢えない僕らは

(ずっと一緒に、なんて)
(出来ないから今だけは)

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