テニスの王子様 | ナノ




正直に言おう。私の想い人丸井ブン太はとてもモテる。
別に付き合ってるわけでもないし、向こうが私のこと好きだっていうわけでもない。
それでも女は強欲な生き物なもんで自分の好きな人が全然知らない女に囲まれてると良い気はしないし、それどころか凄く腹が立っている。
目の前の仁王にニヤニヤ見られているが、いつもは何も思わないのに今日は別だ、八つ当たりだとファンに殴られそうだけど、どうしてもイライラしたので仁王の脛を少し強めに蹴ってみた。
八つ当たりは良くないぜよ!なんて吠えてる仁王を無視して現実逃避かのように机に伏せて眠りにつく体制に入った。

「ブンちゃんも罪な男じゃのぉ」

「…何がよ」

「もえちゃんがこんなに思っとるのにそれに気ぃつかんとミーハーな女共に囲まれちょって」

仁王には隠し事できないね。なんて余裕ぶってみるけどもうあっちの様子は見たくなかったので上げた頭をまた下げてみた。


「あれ?もえ?体調悪りぃの?」

「あれじゃ、病気じゃ」

「はぁっ!?」

「え、大丈夫なわけ?保健室連れて行ってやるから!」

「ちょっ、ブン太!?大丈夫だからっ!!」

仁王の嘘に引っかかったブン太は私の手を引っ張ってズンズン保健室に向かって歩きだした。
仁王の方に顔を向けてみるとまたニヤニヤとした笑顔でこっちを見てごゆっくりー。なんて言って手を振っていた。
あのペテン野郎、覚えとけ…。



「もえ?どうする?次の授業休むか?」

そのままブン太に手を引かれたまま保健室に着くと定番かのように保健医の先生は外出中だった。
ブン太に椅子に座るように言われて大人しく座ってみるものの、特に体調が悪いわけでもなかったので何も言えないし、授業も行く気がしなかったので休んでしまおうかとも思っていた。

「どうしようかな…」

「朝から体調悪かったのか?」

「いや、そこまで…」

「あんま無理すんなよ、心配すんだろ…」

「心配って…別にそこまで私のこと見てたわけじゃないのによく言うよ」

あぁ、私可愛くない。
なんでこんなこと言ってしまうんだろう…
自然と涙が出てくる。

「…いつも見てるっつーの」

「え?」

「俺、お前のこと好きだもん」

……ブン太の言った言葉が理解できなかった。
今、なんて?好き?え?ブン太が?

「ブ…ン太?なんて?」

「俺はもえのことが好きなの、わかる?」

目の前にいつブン太の顔が真剣だったから嘘じゃないのはすぐにわかった。
それでもブン太が私のこと好きだって言ってくれたことが今の私頭では理解できない。

「嘘…だよ」

「嘘なんかじゃねーよぃ!」

「だって…女の子によく囲まれて…」

「なんだ、そんなこと気にしてたのかよぃ」

なんだとは何よ!と言い返そうと思ったけど、気がつくとブン太の匂いに包まれていた。
ブン太がぎゅっと私を抱きしめてくれていた。

「ファンの子にお菓子もらってたの嫌だった?」

「っ…嫌だったよっ!」

「私だって…ずっとブン太のこと好き…だったもん」

もうこの際だと思って私も気持ちを伝えてみたらブン太は嬉しそうに笑っていた。

「じゃあ、これからもよろしくな、もえ」


砕け散ってしまうくらいに


私の不安なんて散ってしまうくらいに、ブン太の言葉は暖かい。
でもね、私の方がずっとブン太のこと大好きだから!



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