小さい頃は、女の子はみんな必ず大好きな人と結ばれて幸せになれるものだと思っていた。
いや、高校生くらまでは思っていたかもしれない。

いつ私の運命の人は現れるんだろう。
いつ結婚して、いつ子供はできるんだろう。
お父さんは結婚したいって決めた人を認めてくれるかな。
お母さんは泣いて喜んでくれるかな。


現実は甘かった。
お父さんは高額の借金を残し、蒸発してしまった。
そのショックか、お母さんは倒れた。
私に残された道は大学を中退して働くことだった。




「いらっしゃいませー。」


東京も田舎の方にある小さな定食屋。
定食屋と言ってもほとんど居酒屋に近い所だった。
お客さんはサラリーマンからおじいちゃんまで様々。
たまーに学生の子も来たりするが、ここで働かせてもらってもう2年になる。


「恵ちゃん、これ4番さんに。」

「はーい!」

ここのおじさんもおばさんもとても優しく、今では家族のような存在だった。
とても居心地がよかった。


「恵ちゃん明日は休みよね?
今日は早く上がっていいわよー。」

「えっ、逆に休みなんで全然大丈夫ですよ!」

「いいのいいの!たまには彼氏とデートでも行ってらっしゃい!」


おばさんにそんなことを言われるが、生憎彼氏を作っている余裕なんて私はなかった。


「じゃあお先でーす!」


お言葉に甘えて先に帰らせてもらう。
私の家はここから歩いて20分の所にあった。
お父さんとお母さんと過ごしたあの家ではなく、小さなマンション。


最近になるとここに帰ってくるのも慣れてきたのかもしれない。
初めのうちは寂しくて仕方なかったのに…慣れって凄いね。






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