「いやっ…でも、今日…仕事だ、し。」

「どっちの?手伝いの方?」

黒尾くんの言った通り風俗の方の仕事だった。

「そう、だけど…。」



「じゃあさ、俺のために今日だけ…時間くれない…。」

そう言うとまた私を抱きしめる腕に力をこめる。
昨日の今日だし、正直行きたくない気持ちもあった。

「わかった…だから、離してもらっても…いいかな。」

そう言うと黒尾くんはそっと腕を離してくれた。

そのまま昨日帰った時から鞄の中に入れたままだったケータイを取り出してお店のオーナーに女の子になりました。と一言メッセージを送ってそのまま鞄の中にまたケータイをしまった。


一旦着替えるために帰っていった黒尾くんを見送り、私も準備に取り掛かった。
自分なりに薄くもなく濃くもなく程よいくらいの化粧をして、お気に入りのショート丈のニットに黒のスキニーパンツにパンプスを履いておとなしめの格好にした。
髪の毛はストレートにしてバレッタを使ってハーフアップにした。
前に黒尾くんがこの髪型にした。って単純な理由かな…。

着替えて鏡の前でおかしくないか最終チェックをしていると、黒尾くんから着いた。と一言LINEが来ていたので鞄を持って急いで家を出た。

「おまたせっ!」

「いや、俺こそ待たせてわりぃ。」

そう言って歩き出し二人で都心に出ていた。
都心は平日でもとても人が多くて正直歩きにくい…。
あまり高いヒールを履いてるわけじゃないのに、黒尾くんとはぐれてしまいそうだ。

「恵、はぐれるぞ。」

そう言って黒尾くんは私に手を差し伸べてくれて、何の躊躇いもなく黒尾くんの手を取った。

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