あの伊達工業のブロックはギャラリーで見ていた私も正直怖かった。
もちろん本人が1番怖かっただろう。
本人があの旭だから尚更。
コートで落ち込んでいた旭を見てかける言葉もなかった。
大地とスガと楽しそうにバレーをしてる旭が好きでバレーのことも全然知らなかったけど、旭と話したくて必死に勉強した。
たくさん勉強したから、旭と話せるようになって私が想いを伝えると顔を真っ赤にして、よろしく…。と言ってくれてから、こうやって毎回試合を見に来ていた。
今までエースだってことで何回もブロックに捕まりそうになっていた。
それでも皆で力を合わせて乗り越えてきていた。
でも、鉄壁は崩せなかった。
旭は相当落ち込んでいて、しばらく連絡もつかなかったし、学校でもあまり話さなかった。
「旭…。」
「あー、蒼唯久しぶり。」
へらっと笑う旭は前と変わらなかった。
「部活…行ってないって、大地に聞いた。」
「う、うん…。なんかさ怖くて。」
「そっか。」
旭の隣に腰を下ろした。
聞きたいこと言いたいことはいっぱいあった。
どうしてあんなに大好きだったバレーから離れちゃったの?
伊達工業のブロック怖かったね。
大地もスガも心配してたよ、1回顔だしたら?
でも、私が伝えて旭はなんて思うだろう。
何も知らないくせにって思われちゃうかな。
そう考えると旭には何も言えなかった。
「あのさ…。」
「どうしたの?」
「ちょっと、弱音吐いてもいい?」
旭の方を見ても旭は顔を合わそうとしてくれなかった。
「私でよかったら聞くよ。」
「ありがと…。」
そう言ったまま旭はまたしばらく黙ってしまった。
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