正直焦ったところはあった。
でもあいつが誰を好きになろうと俺には関係のない話だった。
モヤモヤをボールにぶつけて、集中しようと思っても頭の中はずっと蒼唯のことでいっぱいだった。
岩ちゃん八つ当たりは良くないぞー、なんて言う及川に返す言葉もなく練習していた。
気がつけば相当時間が経っていて、練習も終わっていた。
このまま練習しても意味がないと思い、及川に自主練せずに帰ることを伝え部室に行こうと体育館のドアを開くと蒼唯が立っていた。
「一ちゃん、お疲れ様!」
「おまえ…なんでいんだよ。」
「えへへ、委員会!長引いちゃったから一緒に帰ろうと思ってさ!」
早く着替えて来てね!なんて元気良く言われて少し戸惑ってしまったが、待たせるワケにはいかないと思いすぐに着替えて蒼唯の元に急いだ。
帰り道、いつものように蒼唯は話してくれているが俺の気持ちは練習中に及川に言われたことで頭がいっぱいだった。
「一ちゃん?何かあったの?」
空返事だったからか、心配して顔を覗き込んできた蒼唯に驚いたが何故かイラっともしてしまった。
想ってる奴がいるくせに俺にこんなことしてきてんじゃねーよ。
蒼唯の肩を掴んで距離を離した。
「…好きな奴いるくせに簡単にこんなことしてんじゃねーよ。勘違いされんぞ。」
思っていたことをそのまま蒼唯に伝えて俺は先に歩いた。
何も言い返して来ないと思い少しした所で後ろを振り返ると、その場にしゃがみ込んでいた。
急いで蒼唯の元に駆け寄ると、肩を竦めて泣いていた。
「ちょ、何泣いてんだよ。」
#namw2#の前に俺も一緒になってしゃがみ込む。
「だ、って…一ちゃ、んが……そんなこと…言う、からっ!」
「……事実だろうがよ。」
「私の気持ち…知ら、ない…じゃない…。」
「知らねーから言ってやったんじゃねーかよ。」
全く顔を上げようとしない蒼唯の頭をそっと撫でると身体がビクっと動く。
こうやって小さい頃から泣いている蒼唯をあやしてきた。
あんなキツイこと言った後にこんなことしてる俺も俺だな、なんて思ったが蒼唯の頭を撫でる手を退けようとはしなかった。
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