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今日の任務で俺らしくない失敗をやらかした。
酷くはないが、1日安静にしろってボスに言われておとなしく自室にこもった。
もえの耳に入ったらきっと泣くんだろうな。なんて思いながらも長期任務で疲れていた俺はそっと目を閉じた。
「…やっ!!…う‥‥……ちゅ、や!!………中也!!」
急に呼ばれる声がして目を覚ますと、目の前にもえが涙を目一杯溜め立っていた。
「もえか、どうした?」
「どうしたじゃないよっ!!ビックリしたんだからっ!!バカっ!!」
「んな!!バカって、手前なぁ」
「だ、って…ボスが、中也が…ケガした、って…」
「阿呆、ケガっても軽いモンだっての」
それでも心配したんだから!!そう叫んでその場に泣き崩れたもえを見て、何故か心が痛んだ。
それなりに共に時間を過ごして来て、もちろん喧嘩もしてきた。それでも絶対に泣かないもえが泣いていた。
仕事柄心配をかけちまうのか承知だ、なんて笑顔で言ってたもえの顔を霞んでしまうくらい泣いていることに衝撃を受けた。
「悪い…」
「っ…バカぁ……」
「心配、かけて…悪い……」
仕方ないこととは言え、きっと待つ側は辛いんだって今回初めて思い知らされた。
「泣くなって…」
「泣いて、ない…」
「嘘つけ、顔上げてみろよ」
「……ヤダ」
泣きじゃくるもえをそっと抱きしめて顔を見せろと言ってみても一行に顔を上げる気配はない。きっと見せたことのない泣き顔を見せたくないんだとは思ったが、それでも見てみたい。と思ってしまった。
「なぁ」
「ヤダ、ってば」
「心配してくれて泣いてんだろ?」
「ち、がうからぁ…」
悪い、でもゴメン。と一言つぶやいてから、ソっともえの顎を持ち上げ触れるだけのキスをした。
君の目に光る涙
もう、もえを泣かせたくない、そう思うともっと強くならねぇとな。と思ってしまった。
もう絶対手前を泣かせたりしねぇからな。
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