文豪ストレイドッグス | ナノ


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君は正直すぎるから、いつか誰かに騙されてしまうかもね。そう言われたこともあったけど、それでも目の前の中原さんはきっと悪い人じゃないと、根拠はないけどそう思えた。

「俺のことはどう思ってんだ?」
「中原さんは…悪い人には私は見えません」

それに私の知り合いに良く似た人を知っていますしね。と付け足すと何故か少し嫌そうな顔をされた。

「手前の知り合いってのはよ…その……まさかとは思うが…」
「え?太宰さんですが…」

やっぱりかよ…。とつぶやいて中原さんは頭を抱えた。

「お知り合いなんですか?」
「いや、思い出したくねぇ。」

そういや、手前はなんであんなヤツと知り合いなんだ?そう聞かれて答えに迷った。
数ヶ月前、私はこの世から消えてしまおうとした。その時に横浜から出張で来ていた太宰さんに出会った。
共に心中しよう。と声をかけられた時には驚いたけど、どうせ消えてしまいたいんだし誰と一緒でも構わない。そう思って今回横浜に来た。そのことを中原さんに話して軽蔑されないだろうか。そんなことを思ってしまった。

「たまたま出会いました…」
「あいつと関わるとロクなことねぇだろ」

まるで彼を良く知っているような口ぶりに思わず笑いがこみ上げる。

「一緒に心中しよう!なんて言われたんじゃねぇだろうな」
「っ!!」
「その反応、当たりみたいだな」

あはは、そう笑って誤魔化してはみるけど中原さんはなんでもお見通しと言うように私をじっと見つめてくる。

「何があったかは俺も知らないが、人生捨てたモンじゃねぇって思うぜ、俺は」
「そう…ですよね」
「俺だってな、誇れた生き方なんざしてねぇが」

人生捨てたもんじゃねぇって思ってんだぜ。そう言ってくれた中原さんの顔は今までよりずっと素敵な笑顔で、私の心臓が少し高鳴った。

「太宰の野郎と心中するくれぇなら…俺んとこ来るか?」

きっとボスも手前のこと気に入るんじゃねぇか?
そう言ってくれてそっと手を差し伸べてくれた中原さんの手を私はそっと掴んだ。




差し伸べたこの手




これから今までに経験したことのない経験をする。
それでも私はこの時中原さんの手を掴んだことを後悔はしなかった。





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