弱虫ペダル | ナノ




自転車なんて精々ママチャリくらいしか知らなかったし、正直興味もなかった。
だから一生懸命ロードバイクってのに乗ってるあの人達のことをバカだと思っていた。
ロードバイクに乗ってる人達っていうより一生懸命何かに必死になってる人達のことをそう思っていた。
頑張って何になるんだって話だし、それだけカッコ悪い。
それを見てキャーキャー言ってる女達も本当に意味がわからない。

「で?神谷はいつになったら俺の勇姿を見に来てくれるのだ?」
「だから、行かないってば」
「んー。そんなことばかり言って!本当は気になっているのであろう?」
「絶対にないから安心して」

冷たいなぁ!と後ろで叫んでるバカは無視。
東道と同じクラスになってこうやって毎日誘われてるけど行こうと思ったこともない。

でも気になってるのは、あのダサい不良の荒北が自転車競技部というやつに入って前は打って変わって真面目に部活をしているらしい。
あいつは私と同じだと思っていたのに、あそこまで変わってしまった荒北に何があったのか少し気になってはいた。



放課後、うるさい東道を無視して帰ろうと通学路を歩いていると後ろから叫び声。
どこかの部活が外周でもしてるんだと思ったら私の真横を凄い速さで何かが通り過ぎた。

「荒北…」
「あ?」

しまった!つい声が出てしまって荒北は少し不機嫌そうに自転車を停めて振り向いた。

「お前、確か…神谷?」
「あ、うん……」
「どォしたの?」
「いや…なんにもないよ」
「あ?なんだそりゃ」

あはは、ごめんね。と言うと荒北はまた走り出そうとペダルに足をかけたと思ったらまた振り向いた。

「あのさァ」
「っ!な、何?」
「また練習見に来てヨォ」
「えっ?」
「カッコいいとこ見せてやんよ」

そう言って走り出した荒北は悔しいけどカッコ良く見えた。





何も知らない私




なんだ、カッコいいとこあるんじゃない。
仕方ない、今度の試合見に行ってみるか……

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