弱虫ペダル | ナノ





卒業式なんて俺には全く感動もクソもなかった。
福チャンやチャリ部の奴等と離れるって思うとチョットは寂しい気持ちかもしンねェけどそこまで寂しい気持ちはなかった。

なのに、あいつは泣いていた。

あいつとは神谷琉唯のことだ。
入学して誰も近寄らせなかった俺にどんだけ突き放しても毎日飽きずに俺に話しかけてきた。
どんだけ暴言を吐いてもどんだけ無視しても俺にズット着いて来たあいつのことをあの頃の俺はきっと嫌いだったと思う。
でも俺がチャリ部に入ったことを報告したときもそういや泣いてたっけか。
何に泣いてんダヨ、と聞くと嬉しいんだって!と笑って答えた神谷チャンに少し惹かれたのかもしれない。

その時からズット神谷チャンのことが頭から離れない時期もあったケド、気がついたらそんな感情はどこかに飛んで行ってた。
学年が上がっても3年間同じクラスであの時みたいに毎日部活のことを聞いてきたり。世話を焼いてくれる神谷チャンのことをやっぱり好きになってたみたいだ。


「神谷チャン」

クラスメイトに囲まれて泣きじゃくってる神谷チャンを呼び出すと目を真っ赤にして俺の元にやってくる。

「ど、したの?荒北?」

こんな顔しててごめんね、なんて必死で涙を拭う神谷チャンの頬をそっと撫でてやるとスッゲェ驚いた顔してた。
珍しく荒北優しいね、ウッセ!なんて会話をしてると神谷チャンと離れるのが少し寂しいと感じてしまった。
神谷チャンは福チャンと同じ大学に進むことになっていた、それがたまらなく悔しい…

「神谷チャン、チョット話したいことあるんだケドォ」
「ん?どうしたの?」
「笑うなよ?」
「笑わないよ」

昔サボりに使っていた空き教室に向かうまでの間昔話をしていると神谷チャンはまた泣き出しそうになる、それを見て涙を拭ってやるとフフッと心なしか嬉しそうに笑う。

「で、話って?」
「あのよォ、俺神谷チャンのこと初めて会った時からズット好きだった」
「えっ…」
「信じらンなくてもイイ、俺の自己満足でイイ」

今まで世話になったネ。と言って立ち去ろうとすると待ってよっ!と神谷チャンが声を荒らげた。

「返事…聞かないの?」
「別にィ」
「聞いてよ、私も…ずっと荒北のこと好きだった…よ?」

そう言った神谷チャンの顔は真っ赤に染まっていつもより可愛く見えた。




涙声のまま歌う君



「ずっと気になってたから話しかけてたの気づいてよ」
「…ワリィ」
「バカっ」




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