弱虫ペダル | ナノ




ここまで必死になって走ったのは一体いつぶりだろうか。
止まってしまいたくて、息が続かなくて、今すぐにでも倒れてしまいたいのに、それでも私は足を休めることはなかった。

『荒北さんが…リタイアしました』

そう聞かされたときは心臓が止まってしまうんじゃないかと思うくらい驚いたし泣きたくなった。
周りに声をかけられてもそれも聞かずに私は走り出していた。

やすが運ばれている救護テントに着いた時にはどんな顔をしてやすに会えばいいのかわからなくなってさっきまで止まらなかった足がピタっと止まった。
走ったからか、緊張しているのか、どちらかわからないけど心臓がドキドキ高鳴ってる。

こんな時やすはきっと会ってほしくないタイプだと思う、それでも私はやすに会いたくてこうやって走って来たのに…なんて言えばいい?

いつまでもこんなとこでうじうじしてたってどうしようもない!と心に決めてそっとテントに入ってみるとベットに横になっているやすが1番に目に入った。

「やす……」
「テメッ!んでここにいんだよ…」
「だって、やすが…やすが…」
「…ワリィ」

そっとやすの傍に近寄ると一緒にいた泉田くんは外の空気を吸って来ます。と言って席を外してくれた。

「やすぅ…」
「それしか言ってネェじゃねぇか」
「だって、やす…一生け、んめい、練習…」
「わァったから…頼むから泣くなヨ」
「ごめっ…」

言葉が出にくいと思ったらやすに言われて気が付いた、私泣いてたんだ。
ここで泣くのは私じゃないのに、やすに指摘されてからまた涙が溢れ出て止まらない。
こうやってやすの前で泣いたりすることは今まで1回もなかったからきっとやすも困ってる、頑張ったのは私じゃない、過酷な練習を必死にこなして来たやすの方が何倍も何十倍も悔しいに決まってる。

「や、っす…すぐ、泣きやむ…からっ!だからっ、今だけ…泣かせてっ」
「…わァった」

待ってるからまた笑ってヨ。そう言ってやすが頭を撫でてくれることが何より嬉しくて強がって泣けないやすの為だと自分に言い聞かせて少しでも早く泣き止めるように涙を流した。





ホントはスゴく悔しいよ



「やす…ありがとう」
「あ?何がだよ」
「代わりに泣かせてくれて…ありがとう」
「……っせ!俺は泣かネェヨっ!!」




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