弱虫ペダル | ナノ




忙しくて会えないことなんて良くあった。
靖友も私もそれぞれ別の大学には進んだものの、自転車と言う共通があったから耐えられる気がしたハズなのに、どうしても時間が無いと言うのは心細くなる。

靖友は洋南、私は福富と新開と共に明早に進んだ。
それでも靖友も頑張っているのだから、文句は言えないし言うつもりもなかった。

「わりぃ、今度約束してた日練習入っちゃった…」
「そっか…残念だけど仕方ないよ」

頑張ってね。と言うものの、正直ショックで仕方なかった。
もう何ヶ月会えていないんだろうか。
お互いのオフの日なんて早々被るモンじゃないし、こうやっていきなり練習が入ることも前から多かったし今までの分ゆっくり会おうと言ってくれたのは靖友本人だった。

電話を切っても何もする気にならなくて靖友から届いたLINEも開けずに、そのまま私は練習に向かった。

「どうした琉唯、顔が暗いぞ」
「ん?何かあったのか?」
「福富…新開…何もないよ」

強がりだってバレバレなんんだろうけど自分に言い聞かせるように強がる言葉が次々に出てくる。

「何もない様な顔をしているじゃないか」
「何もないって!ちょっと寝れなかっただけだよ!」
「…靖友関係で何かあったんじゃないのか?」
「っ!」
「図星か…」

携帯を見ていた新開が真っ直ぐ私を見た。
きっと私が返事をしなかったから靖友が新開に何か送ったのだろう。

「靖友も心配してたぞ?」
「また何かあったのか?」
「……」
「俺たちで良かったら話聞こうか?」

練習始まるまで時間あるし。と言ってくれた新開の優しさに今まで我慢してた私の涙が溢れ落ちた。

「な、泣くな!」
「っ、ごめ」
「寿一、そんな言い方をするなよ」
「私が、悪いの…ごめんっ」
「で、何があったんだ?」

少しずつ伝わっているかはわからないけど、靖友との今までのことを話した。
もう何ヶ月も会えていないこと、会う約束をする度に練習が入ってしまってそれにうんざりしていること。
靖友にはこうやって弱音を吐いたりできないし、頑張ってる靖友の邪魔をしたくないことも…。
唯一離れていても繋がっていると思っていた自転車にこうやって邪魔をされるなんて思っても見なかった。
靖友は選手として、私はマネージャーとして。
お互い違う形だけど頑張ろうね!なんて笑い合ったのは一体どれだけ前の話なんだろうか。
会わない時間が多すぎて、靖友の温もりも無邪気に笑うたまにしか見せてくれない笑顔も全て忘れてしまいそうで、正直怖かった。
もしかしたらもう靖友には新しい彼女がいるんじゃないかって、私以外に気になる子がいるんじゃないかって…不安に飲まれてしまうんじゃないかって。



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