弱虫ペダル | ナノ




やすはよくわからない奴だ。
記憶のない内からずっと一緒にいたけどいきなりグレたことにはやすの両親もうちの両親も本当に驚かされた。
やすの両親に頼まれて何があったのかを聞いてみても何もねぇよ!バァカ!なんて罵倒されたこともあった。
それでもやすに何があったのか私は聞いておきたくて毎日やすの部屋に通って毎日毎日理由を聞いた。

結局最後は理由を話さなかったけど、同じ学校舐めんな!とやすを蹴りたくなった。
野球部のまだやすと仲の良い子に話を聞けば、怪我で投げれなくなったことをチームメイトにボロカス言われ、そのまま野球部を辞めてあーなった。
滅多に怒ったりはしないけどその時だけはどうしても怒りを抑えられず教室まで行って、やすの跡継ぎをした現エースの胸ぐらを掴みあげた。

その後のことはあまり覚えてない。
気がついたら自室にいてお母さんに何やってんの!女の子が!なんて怒られた。
でもね、聞いてお母さん。やすがねバカにされてるのが私はどうしても納得できなかったの…。

次の日いつもとは逆にやすが私の部屋にやって来た。
なんであんことしたんだ。と聞かれても何もねぇよ、バァカ。と返してやると顔を歪めるやす。
別に意地悪をしたいわけじゃない。
1番悔しいのはやす本人のハズなのに、なんで私が泣きそうになってんだろ…。
涙がこぼれ落ちてしまう前に膝を抱えてやすに見えないようにそっと涙を零した。

「んでテメェが泣いてんだ、バァカ」
「な、いて…ないっ」
「泣いてんじゃねェか」
「うるさい!やすには関係ないでしょ!!」
「俺の為だったんでショォ?」
「っ!!」

やすがあまりにもしつこいので腹が立って顔を上げると今までに見たことないくらい悲しそうな顔をしてるやすと目が合った。

「や、す?…」
「……あんがとよォ」
「何が?私…何も……」
「あんだけ大声で叫んでたら聞こえるっつーの。
俺の為に怒ってくれたんでショ?」
「ちがっ」

違う!と否定しようと思った時にはそっとやすの腕に包まれていた。

「やす?」
「わりィ…でも、俺もう野球はしねェよ」
「なんでよっ!あんだけ、頑張った、のにぃ!!!」
「高校は野球部のない箱根学園に行く」
「はこ…ね?」

おう。と言って身体を離されたと思えば真剣なやすの顔が視界に入る。



あなたがいてほしい


お前も箱学来いよ。

そう言ってもらえたことは今までで何よりも嬉しい一言だったんだよ、やす。


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