ボーッとその場に立っていると部室から荒北の叫び声が聞こえた。
あまり近い距離でもなかったから、荒北が何を叫んでいたのかはハッキリとは聞こえなかった。
その直後に勢い良く部室の扉が開き、バンっと勢いよく扉を閉めたと思ったらズカズカと少し不機嫌気味に私の元に歩いてきた。
「何かあったの?」
「んでもねェよ…行くぞ」
そう言って歩き出した荒北の後ろについて行くものの、こうやって二人っきりになるのは久しぶりだったからか、お互い何も話し出そうとはしない。
たまにチラっと私の方を確認しては前を向いて歩き出す。を繰り返している荒北を見てすごく不器用だと笑ってしまった。
「ナァニ笑ってんの?」
「ん?何もないよ」
「んだよォ」
それより隣歩いてくんナァイ?俺家しらねェし。と言われて慌てて荒北のとなりに並ぶ。
こうやって並んで歩けることがとても新鮮で少し恥ずかしい気持ちもあったけど、なんだかやっぱり嬉しい。少し東堂には感謝しなきゃいけないかな…
「あのよォ…その…」
「どうしたの?荒北?」
「その荒北ってのやめない?」
いきなりのことで驚いてその場に立ち止まると荒北も足を止めた。
「琉唯…」
「や、すとも……」
暗くて良く見えないけどきっと私も靖友も真っ赤な顔をしてると思う。
あぁ、部室で叫んでたのはこのことを言われたんだろうな…靖友はこういったことは苦手だろうし、東堂と新開にからかわれて声を荒らげていたに違いない。
「帰るぞ」
「うんっ!」
また靖友の隣に並ぶとそっと手をつないでくれた。
どんな不器用でも、これが私たちの形なんだと思わされた。
ぎこちない笑顔で二人「で、昨日はどうだったんだ?靖友」
「なんもねェよ、バァカ」
「んー?だが琉唯は荒北のことを名前で呼んでいたぞ?」
「ッセ!黙ってろ東堂」
「ふふーん、俺に感謝するんだな!」
「…………」
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