弱虫ペダル | ナノ




「や、すとも…」
「っ………」
「まぁ荒北、折角来たんだし座れ」
「ッセ!俺は帰るつってんだよ!」
「いいじゃないか靖友、久しぶりなんだし」

必死に帰ろうとしている靖友をみんなはこの場に留めようと説得している中、私は靖友の顔を見ることができない。
会いたい。なんて思っていたハズなのにいざと目の前にすると顔をみることすらできないなんて、一体どうしたいのか。

「琉唯も何か言ってやってくれ!」
「えっ…あの、折角だし…話そうよ?ね?」
「っ!!わァったよ」

どかっと入口の近くに座ってムスっとした顔をして目の前にあったジョッキのビールを飲み干した。

こうしてみんなと集まれたのに、こうやって私達のせいで場の雰囲気を悪くしてるんじゃないかって思ったらなんだか急に苦しくなって、隣にいた新開にお手洗いに行くと告げて席を立った。

トイレに着いてふっと鏡で自分の顔を見るとなんだか酷い顔をしている気がした。
泣きそうで、それでも泣けないのを我慢してる辛そうな顔をしていた。
逢いたくて仕方ないハズだったのにこうやって会うとなんでこんなに泣きたくなるの?
靖友の口から彼女がいるとか、そんなことを聞いてしまった時に私は冷静にいれるだろうか。そんなことを考えているとふいに涙がまた溢れてくる。

いつまでもここにいても仕方ない、と自分に鞭を打って席に戻ろうと外に出た。

「遅かった…な」
「っ!やす…とも」
「よォ」

外に出ると壁にもたれかかって靖友が待っていた。

「どうして…?」
「新開と東堂が行って来いってうっせェからよォ」
「そっか…」

ちょっと話そうゼ。と言われたので4年ぶりに二人っきりになってみたものの、何を話したらいいのかわからなくってお互い沈黙が流れる。

「最近どうなの?自転車早くなった?」
「あァ、まァね」
「そっか…」



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