「琉唯俺来月イタリアに留学することになったッショ」
「えっ…裕介嘘だよね?」
「嘘じゃ…ねぇんだわ」
嘘だとこの時は本当に言ってほしかった。
裕介は冗談なんて言う人じゃないってわかってたからこそ、今回は本当に嘘だと言ってほしかった。
裕介から留学のはなしを聞いてから私は学校を休むようになった。
残り少ない裕介との時間を過ごせないのは寂しいことだったけど、今裕介にちゃんと面と向かって会える自信なんて一切なかった。
金城からも田所からも心配のメールが届くものの、大丈夫。の一言だけ返してそれからは電源を切っていた。
裕介からの連絡が怖かったから。
ずっと一緒に過ごしてきたのにいきなり会えなくなると考えると、すごく大きな恐怖を感じた。
しかも裕介はイタリア。距離がありすぎる。
どうしたらいいんだろう…もうわかんないよ、裕介。
きっと裕介にも夢があるからこうして留学を決めたんだってわかってるつもりなのに、応援してあげられない自分が本当に自分勝手でイヤになる。
「琉唯、裕介くんが来てくれたよ」
色々考えて疲れたのか眠ってしまってたようで、お母さんに声をかけられて会いたくない人の名前を聞いて飛び起きた。
「や、やだっ!今は会いたくないって伝えてっ!」
「…俺に会いたくないって?」
「っ!ゆ、うすけ…」
ごめんね裕介くん、ゆっくりして行ってね。と一言残して下に降りて行ってしまった。
「「………」」
あの日留学のはなしを聞いてから一切連絡を返さなかったからこうやって話すのはあの日ぶりで、何を話せばいいのかわからなくてお互い沈黙が続く。
瞼の重さを感じる辺り、きっと泣きながら眠った所為で目が腫れてるのは鏡を見なくてもわかっていた。
顔見られたくないな…。
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