2年の西東京予選は稻実に惜しくも負けてしまい、野球部にも少しのオフの時間ができた。
「えっ、帰省するの?」
「あぁ、たまには帰って来いってうっせーからよ」
「そっか…」
「お前も帰らねぇのかよ」
オフの日が決まったその日に純に誘われて私も純と共に実家に帰ることになった。
こっちに来るときに両親と約束したから私の家には日帰りでよく帰ったりしてたけど、純の両親やお姉さん達には長らく会ってなかったし、何より純とゆっくり過ごせるのが久しぶりだったので楽しみで仕方なかった。
一緒に歩く地元の風景は何も変わってなかった。
純と一緒に野球した場所も、久しぶりに中学校にも純の所属してたシニアにも顔を出した。
何も変わらない風景に純も心なしか少し嬉しそうにしてるように見えた。
夜はお母さんの提案により純の家族と一緒にうちでご飯を食べることになってたので一旦純と家の前で別れて自室に戻った。
東京に引っ越ししてかなり部屋は殺風景になったけど、小さい頃から過ごして来た部屋はやっぱり落ち着く。
タンスの上には純がシニアにいた頃の試合後に一緒に撮った写真が飾ってある。
確かあの日純は大きなホームランを打ったんだったっけ…。
私も一緒になって騒いでたっけな…。
東京に出て、青道に入ってたくさんのことがあった。
哲くんや亮くんと仲良くなって、クリスくんとも野球部のみんなとも仲良くなった。
相変わらず純ともたくさん喧嘩をしてる気がするし、それに…私の純への想いも大きくなって行ってる気がする。
この気持ちを伝えたい。と思ってる自分もいるけど伝えてしまうと何か変わってしまいそうで怖いと思う自分もいる。
純は優しいから、余計に。
「ルイー!!伊佐敷さん達来ちゃうから準備手伝ってー!!」
「はーい!」
お母さんに呼ばれリビングに降りると純ママとお姉さんの瞳ちゃんと椿ちゃんがいた。