私達は2年になって春休みには新入生も入寮してきて純達も先輩と言う立場になった。
春休み中にも暇さえあれば野球部の練習を見に学校までやって来て、新入生の様子を見ていた。
シニアで活躍していた天才が入部してきた、とも聞いていたので少しの期待と少しの不安を抱いてグラウンドを除くと基本1年生は基礎トレーニングが行われるハズなのに、1人見覚えのない子がブルペンに立っていた。
「いやー、あの子ですか。天才の1年とは」
「えぇ、あれが御幸一也ですよ」
「いやぁ、青道に入ってくれるなんて思ってもみなかったですよー」
ギャラリーの人達もなんだか天才1年の御幸一也のことでソワソワ噂話をしている。
投球練習だけじゃ実力はわからなかったけど持ってるオーラがなんだか違う気がした。
「純〜お疲れ様!」
「おぉ、ルイ今日も来てたんか」
「まぁね!それで1年生どうなの?」
「まだまだだな!俺がしごいてやらねぇと!!」
「ふふふ、あまりいじめちゃダメだよ?」
おう!と右手を上げて練習に戻って行った純の背中を眺めて頼もしく大きくなったように感じた。
ううん、純はこの1年でとても筋肉もついてとても大きくなった。
もう私の知らない純みたいになってしまった。
ダラッシャァァァァ!!といつものように吠えながらめちゃくちゃなバッティングをする純はどしてあんなに飛ばせるんだろう。と思う人もいるかもしれないけど純の努力は私もよくわかっているから決して不思議ではなかった。
守備もやっと外野に慣れてきたのか中々様になって来たような気もする。
大きな声を出して周りを盛り上げる。純には本当にピッタリだと思った。
あれ?私純のことばっかり見てない?
純の他にも哲くんも亮くんもいるのに、それに新入生を見ようって来たのに、それでも頭の中は純のことばかりなんだね。
いつものように練習終わりまで残っていると純が送ってく。と言ってくれたのでいつもと同じく校門で待とうと思ったけど、なんだか人が大勢いたので場所を変えようと寮の方に向かった。
「誰かに用事ですか?」
声をかけられて後ろを振り向くと御幸一也ともう1人少し目つきの悪い子がいた。
きっと御幸一也といるから1年生だと思うけど…なんでこんなに睨まれてるの?
「あ、純…伊佐敷くんいるかな?」
「伊佐敷さん…あぁ、あの人の彼女ですか?」
「ちっ!違いますっ!!」
心なしか御幸くんの顔がニヤニヤとしてるように見えて、この子苦手かも。と思ってしまったのは内緒の話。
もう、早く来てよ純…
「伊佐敷さんのファンか何かっスか」
「え?」
「俺、ギャラリーで騒がれんの嫌いなんっすよ」
「っ!!」
「先輩達の邪魔するんなら来ないでください」
「わ、私…」
「おいっ御幸、倉持何やって…ってルイ?なんで寮の前いんだよ」
「純…いや、校門人いっぱいいたから…ごめん今日1人で帰るね」
おい!と後ろから純の呼び声が聞こえるけど振り返ることなく走った。
騒いでるつもりもなかったし、あの倉持くんって子が言ってたのはまた違う子の話かもしれないのに、そう言われるとどうしてもショックで仕方なかった。