いつもの様にボーっと野球部の練習風景を眺めていたらいつの間にか練習は終わっていて、帰ろうと立ち上がると純が走ってきて送ってやっから校門で待ってろ!といつもの様に言うだけ言って寮に去ってしまった。

きっと一人で帰りたい。と言ったって私には拒否権なんて存在しないから大人しく校門で純を待った。

「悪ぃ、待ったか?」
「純…早かったね」
「急いでやったんだろーが、バカ野郎」
「ふふふ、ありがとう」

そう言っていつもの様に純の隣を歩く。
こうやって純の隣で笑っていられることだけが今の私の唯一の居場所なのかもしれない。

私はわかってしまった。
きっと野球部の、哲くんや純のファンの子に嫌がらせされてるんだって。

だからこうやって純といることも周りの子からしたら気に食わないんじゃないかって。
でもね、私から純を奪わないでよ…。

私には小さい頃から純しかいなかったんだから。
純と過ごした記憶しかないんだから。
それを壊すようなことしないでよ。

きっとこのことを純が知ってしまったら私から距離をあけてしまうだろう。
でもそれだけはどうしても嫌だったから、絶対に純にだけは打ち明けてはならない、辛くても純の前でだけは笑ってなきゃいけない。いつかそう思っていた。


「なぁ」
「んー?どうしたの?」
「……なんか俺に隠し事してんだろ」
「っ!し、してないよ」
「嘘つけ、目ェ逸らしてんじゃねぇか」

お前はいつでもそうだ。嘘ついたらすぐ目逸らす。と言って私の頬を両手で包みこむ。
すごく純の顔が近くてドキドキする…。

「俺じゃ…頼りになんねぇか?」
「違うっ!!」

いつも私なりに純に頼ってきたばっかりだったよ。
いつでもお母さんと喧嘩して家出した時、見つけてくれたのは純だったよね?
学校で喧嘩したっていつでも私の味方してくれたじゃん。

私は純の邪魔するために同じ高校に進んだわけじゃないから、だから変な心配はかけたくなかっただけ…
だからそんな悲しそうな目しないでよ…。

「いっつも、隠してることは姉貴達にしか言わねぇし、今回だって花村にも…何も言ってねぇんだろ?」
「言ってない…けど……」
「なぁ、頼むからよぉ……俺にくらい弱音吐いてくれよ」

お前が消えちまいそうで怖いんだよ。と言った純の声は聞いたことのないくらい弱弱しくて、今にも泣いてしまいそうな顔をしていた。
そんな純を見て私も我慢していた涙がポロポロと流れ出した。

*<<>>
TOP
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -