青道の練習はやはり強豪校ということもあって、とてもすごかった。
練習の内容もだけど選手の気迫も違った。
いいなー…私もボール触りたいな…。
選手達のボール裁きや、バッティングを見ているとなんだか身体がウズウズしてしまってこうやってまた毎日野球が出来る純達が少し羨ましく思った。
純が青道に進まずに地元の高校に行っていても私はきっとソフトを続けてはいなかっただろう。
小さい頃から純と野球をしていたし、自主練も欠かさずしていた私は1年でレギュラー入りを果たしたものの、先輩達によく思われてはなかった。
もちろんイジメもあったからか、私はソフトをすることが楽しくなくなってしまった。
先輩達が引退した後もそれは続いた。
チームメイトなのに何か距離を感じてしまった。
「ルイは天才だもんね」
天才。なんて私には勿体無い言葉だった。
努力をして得たものなのに、どうして周りは天才なんて私を見て言ってしまうんだろうか。
「…い。……おいっ!ルイ!!」
「っ!!」
気がつけば日も落ちて練習が終わったようで純に声をかけれた。
「純…ごめん、ボーッとしてた…」
「ったく…で?どうだったよ、青道は」
「うん、すごかった。」
それと羨ましかった。と小さな声で言うと純は私の腕を掴んでどこかに歩き出した。
純?と声をかけても私の方を全く見ないでどこかに向かって歩いていた。
「あ!神谷さんじゃん」
「小湊くん…」
純に手を離されて周りを見てみると小湊くんや結城くんと他の1年生かな?みんな集まって自主練をしていた。
「純…自主練なら邪魔になるから帰るよ?」
「ん、これ履け」
そう言われると純のであろうジャージを渡された。
「なんでジャージなの?」
「ちょっと相手しろよ…」
そう言われてさっき私の呟いた言葉をきっと聞いてしまったんだと思ってジャージを返そうとすると結城くんにいいじゃないか。と後押しされたので制服の下からジャージを履いた。
純にグローブを渡されて久しぶりの感覚に少しドキドキしている。
「おい、投げっぞ」
「うん!あ、でもちゃんと取れるの投げてね!」
「うっせー!!行くぞ!!」
小さい頃からこうやって純とキャッチボールして、純の暴投も悪送球もずっと受けてきたけど、純も私も段々上手になってきたのはとても感じていた。
でも青道にやってきてまた純は1段階上に行ってしまったと実感させられた。
「伊佐敷…彼女と青春ゴッコなら他所でやれ」
「んなっ!!彼女じゃねぇーっつの!!」
「どう見ても彼女にしか見えなかったが…」
声が聞こえて振り向くと、雑誌で見たことのある顔…滝川クリス優。