しばらくその場で泣き続けた。
きっと誰か人が通ったらおかしい奴だって思われてもよかった。
「ルイっ!!!」
そう、とても安心する声で呼ばれた。
今まで孤独で怖くて…泣くことしかできなかったのに、涙は止まって一也の顔を見た瞬間に私は一也に抱きついた。
「っ…かず、」
「どうしたんだよっ!!こんな時間に!!」
「も、う…やだぁ…」
そっか。と言ってそっと頭を撫でてくれる。
安心にたのか溢れた涙は止まってくれない。それでも一也は何も聞かずにそのまま頭を撫でてくれる。
「落ち着いたか?」
「…うん」
「こんなとこにいつまでもいれねーし、ルイがイヤじゃなかったら俺の部屋来るか?」
「…うん、帰りたく…ない」
そう言って一也はすぐそこに止めていた車に私を乗せて車を走らせた。
車内ではお互い何も話さず沈黙が続いていた。
「散らかってっけど…どうぞ」
「おじゃまします…」
そう言って入った部屋は実家の一也の部屋と似て野球に埋められていたシンプルな部屋だった。
「とりあえず、何があったか話せるか?」
「うん…」
そう言ってゆっくり少しずつ先ほどのことを話始めた。
景が浮気をしていたこと、いつもより強く殴られてしまったこと。
本当に恐怖心を覚えたこと。
話してるうちに一也の表情は段々怒りの表情に変わって、拳は膝の上でぎゅっと握られていた。
「…っんだよ、それ。意味わかんねーだろ」
「…私、何かしちゃったのかな」
「ルイは何も悪くねーよ。おかしいのはあいつの方だ」
そんなことはない。きっと私が何か…。そう呟くと一也はふぅ。とため息を吐いた後に私の元に近寄って来たと思ったらぎゅっと抱きしめられた。
いつもみたいに優しい感じではなく、少し強く。
「一也…?」
「俺…ルイのこと好きだよ」
「っ!!!」
「だから…これ以上泣いてるのも、傷ついてるのも…見たくねーよ」
私はずるいのかな…こうやって一也に気持ちを伝えてもらえて嬉しいって。このまま一也と一緒にいたい。って…
一也は段々男の人になってしまった。野球を初めて段々遠くなっていったと距離を感じたこともあった。
少しでも近寄りたくて、たくさん勉強した。それでも一也はまた離れて行っちゃったじゃない…。
だから…私は逃げようとしたんだよ?なのに…なんで?
「俺…ずっと考えてた。ルイが…このまま死んじまうんじゃないかって…」
「うん…」
「ずっと…俺が連れて行ってやれればいいって思ってた」
「うん…」
「でも…できなかった」
「うん…」
「お前は1回決めたらなんでもやり通すのわかってたから」
「うん…」
「でも…こうやって俺のこと頼ってくれて本当に嬉しい…」
一也の声が少しづつ震えてきた。昔試合に負けて私に弱音を吐いていた時と同じ声だね…。
私はこのまま…一也の手を取ってしまっていいのだろうか。
「一也…あのね、私も一也のこと好き」
「フッ、知ってる」
「好き…好きなんだけど、ね」
「だけど?」
「このまま一也の手を取っていいのかわからない…」
ったく。と言って抱きしめていた腕に力がこもる。
「俺はどんなルイでも、一緒にいたいんだけど…ダメ?」
「っ!!!」
ダメじゃない。ダメなんかじゃない…。
私はずっと一也の隣にいたかったよ。ずっとずっと…一也の隣にいることだけが私の目標だったんだから。