「あぁ、これな。お前が御幸と浮気すっから俺も浮気してきた」
なんで?…私は確かに一也と会ってしまったけど、どうして?………
「……いやだ」
「はぁ?何がだよ。これでお前も俺の気持ちわかるだろーよ」
あー、気分わりぃ。と言って景はまた出て行ってしまった。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
気持ち悪い、景が?どうして?意味がわからない。
もう、意味がわからない…。
もう、一人で耐えることができない。
そう思って最低限の荷物を動かない身体を無理やり動かしてまとめて家を出た。
時間も遅く、どうしたらいいかも、どうしたいかもわからなかったけど、あの空間から逃げたかった私は家をただ飛び出した。
そして震える手で一也に電話をかける。
プルルル…プルルル…
もう遅いから寝ているかもしれないのに、一也なら出てくれるんではないか。と言う少しの期待を背負い電話をかけ続ける。
「…はい」
「かず、や…私……ルイ」
はっ!?ルイ!!!?っときっと寝ていた一也の声がイキナリ大きくなる。
「か、ず…たすけ、て……」
「おいっ!どうしたんだよっ!!!」
言葉にならない声で必死に一也に訴えるが、何も伝わっていないのか落ち着けって。と繰り返す一也。
「今どこ?」
「え、きまえ…」
「迎えに行くからちょっと待ってろ。切るぞ?いいな?」
わかった。と返事をしてそのまま電話は切れた。
とっくに終電は出てしまった駅前は真っ暗で少し怖いとも思ったが、あの家にいるより全然安心できた。
身体は痛くて全然動いてくれないし、身体の震えも止まらない。
一也…早く来て……会いたいよ…。