苦しくてこのまま死んでしまうんじゃないかって思った。
でも一也の匂いが私の中にいっぱいになった瞬間大丈夫。って一也の言葉が聞こえてきて段々苦しくなくなったと思ったら一也に抱きしめられていた。

そして一也の名前を呼んだまま、また泣いた。
いつまでたっても泣き止まない私を責めることなく一也は私を落ち着かそうと頭をずっと撫でてくれる。

小さい頃から泣いた私を泣きやますのは一也の仕事だった。
今みたいにそっと頭を撫でて落ち着くのを待ってくれていた。

一也が試合に負けた時も、初めてホームラン打った時も、最近では一也がプロ入りが決まった時だったかな。

お母さんにルイは一也くんの妹みたいだね。と言われたこともあったっけ。

「落ち着いたか?」

私を抱きしめたまま一也に聞かれて、うん。と言うと一也の身体が離れた。
一也の顔はさっき怖いと思ったのが不思議なくらい優しい顔をしていた。

「あのさ、おばさんに聞いたけど…彼氏と同棲してんだろ?」
「っ…うん」

そっか。と言って私の隣に座る一也。
お母さん話しちゃったのか…まぁいつか話すつもりだったしね。

「あのさ、間違ってたら…わりぃんだけど…もしかして暴力振るわれてたりする?」
「ち、が…」
「そっか…言いたくなかったら今は何も聞かない。」
「違うんだって、ば」
「言いたくなったら言ってくれよ」

きっと一也は私が嘘をついてるのわかってる。
私はずっと頑固だって言われてその頑固さに一也と喧嘩したこともあった。
でもいつも優しくしてくれるから私が最終的に謝って終わっていた。

「俺はさ…ルイが泣いてんの見たくないから」
「ごめん……」
「謝んなって。悪いってちょっとでも思ってんなら笑ってよ」

そう言ってくれた一也は私の大好きな笑顔をしていたから、私も自然と笑っていた。
そうそう、ルイは笑ってた方が可愛いんだから。なんて言う一也は本当に反則だと思う。

でもね…ごめん一也。
もう私、一也に会えないの。

一也に会ったら景がとても怒ってしまうから…。
だからもう私のことは忘れてください。








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