ダイヤのエース | ナノ




『伊佐敷くんってあんま甘い雰囲気作らない気がするよね!』

友達にそう言われて確かに。と思った私もいた。

伊佐敷と付き合ってすごいいい人なんだけど、実際2人きりになる時間なんて限り無く少ない。
それでもその少ない時間ですら伊佐敷は特に何もしようとしない。

伊佐敷も健全な男子高校生だ、野球ばかりしててそういうことに興味がないのかと思って小湊に聞いてみても、あいつもちゃんと男だよ。で終わらされた。

深い意味はないんだと思うけど、それでも何もしてくれないのは少し不安にもなる。

「ってことでどう思いますか、小湊くん」
「俺に聞かないでよ、直接本人に聞けばいいじゃない」
「いやいやいやいや、こんなこと本人に聞けるわけないじゃん」
「まぁそうだよね、聞いたところで純が正直に答えるとも思えないし」

ですよねー。と机に伏せて遠くで結城くんと話してる伊佐敷を見る。

「小湊ならどうなの?彼女とその…そういうことって、したいと思う…?」
「もちろん、俺だって男だって」
「だよねー…」
「1回純と話してみるといいよ」
「えっ、でも…」

いいから。て言って席を立ったと思えば伊佐敷の元に向かって純!ちょっと!!と伊佐敷を呼んでしまった…。

「あぁ?亮介どうしたんだよ」
「蒼唯が話したいことあるんだってさ」
「ちょ、小湊っ!!」
「…?あぁ、どうした?」
「ここじゃアレでしょ?先生には上手く言ってあげるから行っておいで」

そう小湊に背中を押されて私と伊佐敷は教室を出て屋上にやってきた。
休み時間も終わりに近い為屋上には人影は全く無く、夏も近かったからか少し暑い気もした。

「で?話って?」
「いや、あの…その……」

もっと伊佐敷と触れ合いたい。なんてイキナリ言ったらきっと伊佐敷でも引いてしまうに違いない。
でも折角小湊が作ってくれた時間だし、ここで何も話さずに帰るなんて…きっと帰ったら悪意の篭った手刀をお見舞いされるに違いない…。

「あの、さ…伊佐敷は私のこと、好き?」
「んなっ!!!イキナリ何、言ってんだよっ!!」
「答えてよ…」
「っ!…んなの、好きじゃなかったら…付き合ってねぇだろ…」
「じゃあ、さ…手繋いだり……その、キ、ス…したりしたいって思うのは…私だけなのかな…」
「っ!!」
「あの、気持ち悪いって思われてもいいからさ、聞いて?」
「おう…」
「別にデートしたい、とか毎日一緒に帰りたい、とか…そんなことは言わないけど…たまに帰った時に手繋いで歩いたり…その、キスもしたいな、って思うわけでして…」
「……」
「伊佐敷、何もしてくれないから、私のこと嫌いなのかなって…女として見てもらえてないのかなって…」
「バカ野郎」
「えっ」

恥ずかしくて伊佐敷の顔を見れずに淡々と話してると急に腕を引かれ気づいたら伊佐敷の鍛えた胸が目の前にあった。

「ちょっ!!いさし、き…」
「俺がどんだけ我慢してたと思ってんだよ、バカ野郎」

ぎゅっと強く抱きしめる伊佐敷の腕に更に力がこもる。
初めてこんなに距離が近くなったけど、私伊佐敷の匂いすごく好きだ。
こんなこと伊佐敷の腕の中で思ってしまってる私はとことん変態なのかもしれない。

「俺だって、蒼唯のこと抱きしめたりキスしたり…したかったけどよぉ、アレだよ。」
「どれよ…」
「い、嫌がられると、思ってよ…」
「バカはどっちよ…」



抱きしめてよもっと



「不安にさせたならわりぃ…」
「もう、いいよ。バカ」

そう言って伊佐敷の顔が近寄ってきて、目を瞑ると伊佐敷の唇がそっと触れた。




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