ダイヤのエース | ナノ




ふっと近くのコンビニに行こうと思って外に出てみたものの、帰り道に大雨に襲われた。
走って帰れない距離ではなかったが、これじゃ寮に着く頃にはずぶ濡れ確定だ。
試合前の大事な時期に風邪なんか引いてられねぇし、わざわざ傘を買うのもなんか嫌だと思いしばらくコンビニの前で悩む。

このまま待っても止みそうになかったので、もう走って帰ろうと着ていたパーカーのフードを被ろうとすると、御幸くん?と声をかけられ後ろを振り向くと、同じクラスの神谷が立っていた。

「あ、神谷じゃねーか。どうしたこんなとこで」
「それは私のセリフだよ!御幸くんこそこんなとこでどうしたの?」
「いや、買い物に来たのはよかったんだけど、急に雨降ってきてさ走って帰ろうと思って」
「えっ!!いくら野球部の御幸くんだからって風邪引いちゃうよ!!」

だよな。と笑ってみせると神谷の持っていた赤色の傘を俺に差し出して来た。

「うちすぐそこだからお母さんに迎えに来てって言ったらすぐ来てくれるし…よかったらこれ使って?」
「え、いや…でも…」
「いいからいいから!御幸くんが風邪引いちゃう方が私イヤだもん!」

そう言ってくれた神谷の行為に甘えてサンキュ。と言って傘を借りた。

「じゃあ私買い物してくるから!!御幸くん練習頑張ってね!!」

そう言って店内に入った神谷を見送った後、高校生の男には決して似合わない赤色の可愛らしい傘をさして寮に帰ろうと歩いた。




僕には傘がなくて




あまり接点のなかった神谷の優しさが無性に嬉しく思えた今日。
俺は恋をしたのかもしれない…。



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