ダイヤのエース | ナノ




「ごめん、俺やっぱり野球優先しちまうから…もう悲しい思いさせたくない、だから別れよ」

洋一にそう言われた日もこんな雨が降ってたっけな。
夏の甲子園予選のすぐ後、ずっと傍で支えていたつもりだった。
もちろん寂しいなんて思ったこともあったけど、私はグラウンドで走り回っていた洋一が好きだったから、文句なんて言ったことはなかった。

でも先輩達の引退を機に責任感が強くなったのか、主将になった御幸を支えるための副主将として、自主練の量も増えた。
それでも傍にいてずっと洋一のことを支えるんだ。って思っていたのに…。

練習が終わっていつものように自主練を手伝おうと室内練習所に向かおうとしてたら、送って行く。と言われて珍しいと思ってたら、別れを告げられた。

何が起きてるかわからなくて、どうしていいかもわからなくて、その場に立ち尽くした。

洋一が帰った後も何が起きてたのか頭の整理がつかなくて、ずっと雨が降ってる中その場から動けないでいた。
次の日長時間外にいたせいか風邪を引いたのと洋一に言われたことのショックに1週間近く学校には顔を出さなかった。

その間洋一からの連絡はもちろん、お見舞いに来てくれることも1回もなく、本当に別れたんだと実感させられて私は毎日泣いていた。

それから学校に行っても洋一と言葉を交わすことはなかった。

別れてもいつものように洋一を目で追ってしまっている自分がいた。
いつものようにグラウンドを走り回って、楽しそうに笑顔でプレーしてやっぱり輝いて見えていた。

「最近倉持と一緒にいるとこ見ないけどなんかあった?」
「御幸……」
「俺でよかったら聞くけど?」

何もないよ。と言って御幸の横を通り過ぎる。
今きっと自分の気持ちをぶちまけてしまうと、抑えが効かなくなる。
今は、今だけは御幸の優しさが…苦しいよ。


この雨のように私の洋一への気持ちも洗い流してくれればいいのに…。
洋一、私ずっと忘れられない気がするよ。
近くにいるのにすごく遠く感じるよ。




君だけ消せない



どうか、私の気持ちを全部雨で流してくれませんか……。
もう、洋一を眺めて胸が苦しい。と思いたくない。




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