今もしこの場に俺がもう一人いたら、きっとその俺が俺のこと殴っててもおかしくないだろう。それくらい自分でも最低なことしてる自覚はあった。
夏の予選で哲さん達がいても勝てなかった。
それに対して俺自身の課題なんて山積みだった。
その中で蒼唯とのことを疎かにしてしまってるのも嫌で仕方なかったし、そんな野球以外のことを考えてる時間ですら惜しかった。
それでも蒼唯は一也の負担にならないように頑張るから。なんて言ってくれたのにそれすら俺にとっては期待と言う名の負担になっていたのかもしれない。
付き合って一緒にいれる時間は無くても一切文句の言わない蒼唯に俺は完全に甘えていた。
普通の女子高生だったらきっと遊びに行ったりしたいハズなのに、俺は自分のことで精一杯すぎてそんなことしたことがなかった、いつ愛想をつかされてもおかしくないハズなのに、なんでお前は俺に笑いかけてくれるんだよ。
それでも今は目の前のことに集中したいから。そんな理由で別れを告げた。
「一也…?私何か一也の負担になることした?」
「………」
「黙ってちゃ、わかんないよっ」
目にいっぱい涙を溜めて俺をしっかりと見つめてくる蒼唯を見て、きっと俺の知らないとこで泣いてたりしてたのかもしれない。そう思うと尚更このままじゃいけない気がした。
「……悪い、無理なんだって」
「無理って、なんで急に…」
「無理なもんは無理なんだって!!」
もうこれ以上蒼唯のことを見ていられなくなって目をそらすと、嘘だ。と呟いた蒼唯。
「一也は、ね…嘘言う時絶対目を逸らすんだよ?」
「嘘じゃねぇよ」
「嘘…だって、言ってよ……」
「…………」
嘘だ。そう言えたらきっと楽なハズなのに、どうしてもそれができないんだって。
俺は…これ以上お前のこと傷つけたくないんだよ、わかってくれよっ!!
「やだ、よぉ…私ちゃんと、我慢するからっ!だから…別れるなんて言わないでよぉ…」
我慢していた涙が蒼唯の頬に伝い、泣き崩れる。
ここで手を差し伸べてしまったら、抱きしめてしまったら、俺は自分に勝てるのか?
「それが重いんだって」
― やめろ、そんなこと思ってないだろ
「大体期待って何なんだよ」
― これ以上傷つけてどうするんだ
「悪いけど、そんな重い奴とは付き合えねぇんだわ」
― 俺にはお前が必要なんだよっ!!
「じゃあな」
俺はそう言って蒼唯の前から立ち去った。
一也、そう小さな声が聞こえたけど聞こえないフリをして俺はそのまま歩き出した。
蒼唯、俺って最低だよな。
こんなにお前のこと好きで必要としてるのに自分のことでいっぱいすぎるからって切り離す奴なんだぜ?
……ごめんな、もう泣くな。
君の手を僕は離したんだ俺にはお前がいなきゃダメなのにな…ゴメン蒼唯、愛してた。
柄にもなく頬を伝う涙を拭って俺は今日も自分に足りない課題をこなすための練習場に向かった。
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