こんな泣きそうな顔初めて見たかもしれねぇってくらい辛そうな顔をしていた。
きっといつもなら教室出たくらいで殴られてただろう。
「で、どうしたんだよ、ここなら誰も来ねぇよ」
「……何にも、ない」
何にもないって顔してねぇじゃねぇかよ。と言ってそっと蒼唯の頭を撫でると何かのストッパーが外れたみたいで、ポロポロと涙を流し始めた。
「理由…言いたくないなら聞かねぇから、気が済むまで泣け」
「っ…グス、く、らもちぃ…」
「ちゃんとここにいてやるから」
そう言って気がついたら蒼唯の身体をそっと抱きしめていた。
男みてぇな性格してるとは言え、蒼唯の身体は小さくて細くてこのまま力を込めたら壊れてしまうんじゃないかってくらいだった。
「わっ…たし、ね……」
「おう」
「倉も、ち…とみゆ、きに…媚び、ってるって…」
「おう」
「そ、ん…じゃな、い…から…」
わかってるよ、そんなこと。と言うと蒼唯は俺の背中に腕を回してまた泣き出した。
きっと蒼唯は俺や御幸のこと仲の良い友達。と思ってるんだろう。
だからこそ媚びなんて言われて悔しかったんだろう。
「俺も御幸も媚び売ってくるよぉな奴ならあそこまで仲良くしてねぇっつーの」
「っ、うん…」
「だから気にすんな」
「…あ、りが…とぉ…」
なぁ、蒼唯今俺の気持ちを伝えるつもりは無い。
でもこうやって辛いなら傍にいてやるから、だからまた明日からいつもみたいに笑ってくれよ。
ずっとここにいるから俺の大好きな、あの無邪気な笑顔また見せてくれよ。
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