ダイヤのエース | ナノ




「よぉ」
「倉持…くん」

顔を見るとやっぱり目が真っ赤になって腫れていた。
俺が泣かせたんだと思うと少しだけ胸が苦しくなった。

「話って、なんだよ。わざわざ御幸使ってよ」
「あの、ね…別れて……ほしいの」

なんで。と聞いて蒼唯の顔を見ると目にはまた涙が溜まっていた。

「私…倉持くんが、浮気してる、の知ってた…」
「あぁ…」
「でも、きっと…倉持くんは、私のとこに…帰って、きてくれる…って」
「あぁ…」
「でもね。泣いて待つの、に…疲れちゃ、った」
「……」
「だから別れて、くだ…さい…」
「わかった」

今までありがとうな。と言ってその場を去って教室に帰ろうとすると、またあいつがいた。

「倉持っ!!!」
「んだよ、またお前かよ…」
「あんたのせいだっ!!あんたのせいで…蒼唯は……」

いつも強気で決して涙なんて見せない強い女だと思っていた目の前の女が泣いている。

「なんで泣いてんだよ…」
「あんたのせいで…蒼唯はっ、笑って…くれなく、なった」
「はぁ?」
「前まで、は、愛想笑いでも…笑ってくれ、てた。でも…今は笑わない」

あんたが蒼唯から笑顔奪ったのよ!!と叫ばれて俺の心臓はドクっと大きな音を立てた。
あのキラキラした笑顔を…俺が奪った?
いつも何があっても俺にワガママを言わなかった。
きっと辛いことがあっても、何もないよ。って笑いかけてくれてた。
そんな蒼唯が笑わなくなったのは俺が少しつまらなくなって意地悪かのように連絡も約束も破るようになってからだ。

「蒼唯は…あんたのこと、本当に、好きだった、のにぃ…」
「返してよっ!!」
「あの子の笑顔返してよっ!!」

そう言われて俺は初めて気がついた。
俺は最低なことしたって。
俺だって、今も蒼唯のこと好きなハズなのに、どうして簡単に手放してしまったんだろうか。
ただあの笑顔が見たかっただけなハズなのに、脳裏には蒼唯の泣き顔しか浮かばない。



バカな奴だと笑ってくれ


俺は取り返しのつかないことをした。
この先一生後悔するであろう、取り返しのつかない…ことを。



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